福利厚生費に関わる節税対策

節税というとすぐに保険に飛びつく経営者は、少なくありません。

しかし、これは重大な誤りです。

保険は、お金を払わなければなりません。

払ったお金のすべてが損金になるとは限りません。

払った保険料の一部、または、全部がもどってくることもありますが、冷静に金利計算をすると、ほとんどの商品は、利回りが乏しく、金融商品としては、2流のものばかりです。

たとえば、10年後に全額返ってくるといわれると損はないと思うかもしれませんが、金融商品として考えると大損をしているのです。

 

節税の王道は、社長への現物給与の経費化です。 

現物給与とは

金銭以外で、役員、従業員が支給される経済的な利益を現物給与と言います。

現物給与は、原則的には、所得税、住民税が課税され、かつ源泉所得税の対象となります。

しかし、下記にいくつか列挙した現物給与は、課税されません。

福利厚生費として、会社の経費に計上することができます。

現物給与は、会社の節税となる上に、役員や従業員にも課税がされないのです。

しかも、現物給与は、すでに社長が享受している経済的利益なので、保険のように追加的な資金負担はありません。

社長がすでに使っちゃったお金をなんとか経費にしようというのが、基本発想です。

 

以下、典型的な手法をいくつか簡単にご説明します。

役員のために社宅を借りて節税

役員が賃貸物件に住んでいるのなら、会社がその物件を借りてその役員に社宅として転貸すれば、節税が図れます。

税務上は、役員から徴収する社宅賃料は、相場よりもかなり安く設定することができます。

徴収するべき適正賃料は、固定資産税評価額から算定されます。

床面積が、木造なら132㎡以下、木造以外なら99㎡以下であれば、だいたい家賃の20%ぐらいに設定できます。

ほとんどの社宅は、この広さに該当するはずです。

それ以上の広さの一般住宅でも家賃の50%に設定できます。

ただし、床面積が240㎡を超えるような豪華な社宅は、会社が払う家賃と同額となってしまうので注意してください。

役員の負担額は、家賃と社宅賃料の差額だけ減らすことができます。

会社が払う家賃と会社が役員から徴収する社宅賃料の差額は、経費として計上できますし、役員にも課税されません。

社宅賃料の算定には、固定資産税の課税標準額を調べる必要がありますが、賃貸借契約書や本人確認などの書類があれば、都税事務所や市区町村役場で固定資産評価証明書を入手することができます。

追加的な現金支出はありませんし、多くの会社が採用している基本的な節税手法ですので是非、ご検討ください。

従業員のために社宅を借りて節税

従業員の社宅の場合には、税務上の適正家賃は、さらに低く設定できます。

役員に小規模な住宅を貸与する場合の賃料の50%以上の金額を徴収していれば、給与課税はされません。

忘年会、新年会、歓送迎会、親睦会、慰安会

会社の負担額は、原則として福利厚生費になります。

通常に行われている社内行事だからです。

ただし、全員参加が原則です。

特定の人だけで実施する場合には、給与あるいは交際費となります。

ただ、結果的に参加しなかった従業員が、ある程度いても問題はありません。

大きい会社なら部署ごとに開催してもかまいません。

但し、参加が自由な2次会も、給与あるいは交際費です。

豪華すぎる飲食も、交際費となります。

親睦会や慰安会は、開催頻度が高すぎると、給与や交際費となりますので、注意してください。

月1回ぐらいが限度でしょう。

残業時の食事代

残業時の食事に要する費用を会社が負担したのであれば、給与として課税はされません。

ただ、残業は、勤務時間外である必要があるので、宿日直が通常の勤務形態である従業員の場合には、適用はありません。

食事は、残業が終わったあとでもかまいませんが、通常の食事の範囲内である必要があります。

ですので、残業後に居酒屋に行った場合には、適正な額でないと否認を受けることがありますのでご注意ください。

保険料

役員と使用人の全員を被保険者とする養老保険に入り、死亡保険金の受取人を遺族、満期保険金の受取人を会社とした場合には、2分の1を資産勘定に経理し、残額は、経費処理することができます。

遺族が死亡保険金を受取れるので、役員と使用人には経済的な利益がありますが、給与課税はされません。

全員加入が原則ですが、「入社3年経過後の社員を対象とする」などの加入条件を加えることはできます。

人間ドックで節税を計る

健康診断にかかる費用は、本来は、本人が負担するべきであり、会社経費とはなりません。

しかし、役員と社員の全員を対象として人間ドック費用を負担した場合には、経費となります。

役員などの特定の人だけを対象とした場合には、経費にはなりませんが、一定の年齢以上の人に限定するのであれば、経費として認められます。

通勤手当

交通機関を利用する場合、および、交通機関と自動車の両方を利用する場合は、一定額までは、非課税です。

自動車のみで通勤する場合には、距離に応じて非課税限度額が設定されています。

出張日当

出張日当とは、出張に行ったときに、旅費や宿泊費の実費とは別に支給される日当です。

出張日当は、会社側では経費となり、もらった側は、所得税、住民税が非課税となります。

出張の多い会社であれば、大きな節税メリットを享受できます。

税務上のメリットを受けるためには、出張旅費規程があり、妥当な金額である必要があります。

ただ、妥当な金額が、具体的にいくらなのかは、税法には書いてありません。

役員報酬や給与の水準、会社の規模、出張の業務内容などを考慮して決める必要があります。

明確な基準はないのです。

そのため、税調の現場では、税務調査官も否認をすることを躊躇します。

税理士の対応や税務調査の内容にもよりますが、社長であれば、一般的には1日1万円ぐらいの出張日当ならば、否認されることはまずないでしょう。

社員旅行を経費処理する>

社員旅行は、次の条件を満たせば、かかった費用を経費にすることができます。

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること。
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
  • 欠席者に現金支給を行わないこと。
  • 少額であること。

「少額」とは、よく1人当り10万円ぐらいまでと言われていますが、法的根拠はありませんし、この金額は、ちょっと保守的すぎるでしょう。

平成3年7月18日の国税審判所の裁決事例では、1人当り183,000の旅行代金でも認容されたことがあります。

研修旅行

業務のために必要な研修であれば、給与課税されることはありません。

私的な旅行ではないかと税調で疑われないように、研修資料や日程表などの資料を整備して、研修の実態があることを示せるようにしておいてください。

保養所や別荘を購入する

保養所や別荘などを会社に購入したり、借上げ上げたりした場合に、役員だけが使っていると給与課税をされてしまいます。

それを避けるためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 利用者が受ける経済的利益が著しく多額でないこと。
  • 従業員が全員利用できること
  • 利用状況がわかる書類を整備すること

スポーツクラブなどのレジャークラブの会費を経費処理する

法人契約し、役員が私的に利用しておらず、社員の誰もが利用できるのであれば、給与課税されることなく、経費処理できます。

社員のためのレクリエーション

スキー、テニス、カラオケ、ボーリングなどの大会を開催して、その費用を負担しても給与課税はされません。

それにともなく飲食費や、宿泊費用も、一般的なものであれば大丈夫です。

ただし、役員などの特定の人しか参加できなかったり、負担する費用の額が多額の場合には、給与課税がされます。

また、不参加者に金銭を支給する場合も、選択の自由があることから課税されます。

社員販売

自社の商品や製品を、役員や従業員に安く販売しても、通常の販売価額の70%以上の価額で販売をした場合には、給与課税はされません。

ただし、取得原価以上で販売する必要があります。

値引率にも、一定の整合性が求められます。

すべての役員と従業員に一律であったり、あるいは、地位や勤続年数に応じてバランスのある格差を設けていたりする必要があります。

また、販売数も常識的な範囲内であることが求められます。

不動産会社が販売する住居を社員に値引き販売した場合には、一般社会における福利厚生の範囲を超えるので課税の対象となってしまいます。

セミナー参加費用

会社が、役員や従業員に職務に直接関係のある知識、技術を習得させるためにセミナー、講習等を受講させた場合には、その負担額は、給与課税されません。

永年勤続表彰を経費処理する

10年以上、永年勤続した従業員や役員に、記念品を支給したり、旅行へ招待したりした場合には、所得税は課税されません。

ただし社会通念上、相当である額である必要があります。

また、5年毎に表彰するというように一定の間隔をあける必要があります。

さらに、現金や商品券で渡したり、高額なものを贈ったりすると、給与課税されますので、注意してください。

旅行券は、換金性があるので、原則として給与課税されますが、実際に旅行に行ったことを確認するチェック体制があれば、大丈夫です。

いくらまでが許容されるかは判断が難しいのですが、たとえば、勤続20年の社員を、夫婦で10万円の国内旅行に招待しても、問題はないでしょう。

慶弔費

役員や使用人に、出産祝、結婚祝、入学祝、病気見舞、香典などを支給した場合には、社会通念上、相当と認められる金額であれば、課税はされません。

例えば、結婚祝いであれば、5万円程度であれば、問題はないでしょう。

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