売上が減少しても目標管理によって利益は確保できる

人間は、目標があるとそれに向かって努力するという不思議な習性を持った動物です。

経営でも、経営者から社員一人ひとりにいたるまで目標を持つことは大切です。

ユニクロの柳井さんが崇拝しているドラッカーも、組織の全員が目標を自己管理することの重要性を強く説きました。

人件費や経費に目標値を設定し、担当者に目標管理をさせる仕組みを導入した場合と、導入しなかった場合を比較すると、生産性は、だいたい10%以上の差が開きます

10%は、とても大きな数値です。10%以上のコスト削減ができれば、売上が多少減っても、利益を確保することができます。

この仕組みのイメージをつかんでいただくために、以下に事例をあげます。

ここでは、居酒屋のケースを取り上げます。「当税理士事務所」と「社長」が経費を削減してゆくやりとりです。

わかりやすくするためにかなりデフォルメしていますが、実際のやりとりですので、目標管理の意味を汲み取っていただければ光栄です。

まずは、目標値を設定する

当事務所スタッフ 「人件費の負担が重いですね。他社比較からしてどうも店舗あたりの人員数が多すぎますね。」

社長 「あんまり働かないやつもいるからね。」

当事務所 「店舗当たりの平均人員を現状の4.5人から3.5人にすることは可能ですか。」

社長 「まあ、しっかり働かせることができれば可能だけど…。短期アルバイトばかりだから、アルバイト時間を減らすこと自体は難しくはないよ。」

当事務所 「店長たちから伺ったお話からも、人がだぶついているようです。シフト管理をしっかりやればもっと少ない人員でもやっていけるはずです。人件費は、1店舗当り、3.5人にはなるはずです。各店長に見直してもらいましょう。」

社長 「わかったよ。」

当事務所 「次に地代ですが、なんとか値下げ交渉できませんか?」

社長 「地代が下がれば、助かるね。」

当事務所 「近隣相場は下がっていると専務からうかがっております。専務に賃下げ交渉をさせていただけるでしょうか!」

社長 「そうするか。」

当事務所 「地代は、50万円少ない300万円を月間目標に設定しましょう。専務にこの目標をクリアするべく値下げ交渉を進めるようにご指示ください。賃貸契約期間中でも再交渉は可能なので、業者を使ってトライしてみてください。」

社長 「やらせてみるよ。」

当事務所 「次に食材費ですが、他社比較から判断してちょっと高めなのですが?」

社長 「他の会社はどれぐらいなの?」

当事務所 「優良企業では、売上比率で30%以下に抑えていますね。」

社長 「うちはどれぐらいなの?」

当事務所 「45%ぐらいです。」

社長 「ほんとに?」

当事務所 「これも専務に、レシピーを工夫するようにご指示してください。顧客満足にために、ある程度、原価率が高いのは仕方ありませんが、現状は、ちょっと高すぎます。競合が30%ですから、せめて、40%を目標としましょう。それで充分に付加価値のある商品は、提供できるはずです。協議していただけますか?」

社長 「わかった。」

当事務所 「次に広告費ですが、抑えることは可能でしょうか?」

社長 「でも、ちらし代だからね…」

当事務所 「10%削減を目標にしていただけませんか?」

社長 「可能なの?」

当事務所 「売上にマイナスの効果があるようならまたもとに戻せばいいんです。また、ちらしも、御社の場合、超高級志向ではないので自社印刷でも、お客へのインパクトはかわりませんよ。」

社長 「自前でちらしの印刷なんてできるの?」

当事務所 「ちらしを自分で作っている会社さんは少なくないですよ。手作り感があって、逆に売上が伸びている会社もあります。」

社長 「そうなんだ!若いのにちょっと挑戦させてみるよ。」

当事務所 「広告宣伝費は、全体で10%削減した値を目標にしましょう。とにかく、売上を維持しながら、経費を削減するためには、さまざまな方法にチャレンジすることが大切だと思います。」

社長 「わかったよ。ところで、先日から話題になっているソフトウェアだけど、買ってもよいかな。」

当事務所 「経営判断ですから、社長のご意見を尊重いたします。ただ、先日も討論しましたが、あのソフトウェアの分析データが売上向上につながるイメージがつかめないのです。レシピー別の売上は、いまでも各店で店長が手作業でやっていますし、十分に損益管理はできています。あのソフトに多額の出費をしても、投資効果が不明です。この投資により、資金繰りはちょっと圧迫されます。再度、慎重に検討されることをお勧めします。ソフトやクラウドシステムに投資すれば、経営課題が解決すると安易に考えるのは危険だと思います。」

社長 「うん。わかったよ。」

毎月、警報を出す。目標設定後のフォローが大切

数ヶ月が経過した後のやりとりです。

当事務所 「月次報告に参上しました。」

社長 「先月はどんな感じだった?」

当事務所 「地代の値下げはうまくいきましたね。」

社長 「苦労したみたいだよ。」

当事務所 「ただ、食材費が下がりましましたが、まだ目標原価率に達していません。そのため、数店舗で営業赤字となっています。」

社長 「レシピー、相当に苦労して、原価を下げたんだけどね。」

当事務所 「同業他社を実地調査してもっと研究されるべきですね。とにかく、優良企業では事実として売上高比率30%以下でやっているところもあるわけですからね。うちが品質を追求するとしても、せめて40%の原価率まで下げましょう。専務と協議して彼に目標意識を強く持ってもらってください。」

社長 「わかったよ。ほかになにかある?」

当事務所 「人件費は、目標値に近づいていますが、まだ、満足できるところまで削減できておりません。」

社長 「そうか。人の問題がからんでいるからもうちょっと時間をちょうだい。各店長にもっとしっかりシフト管理させるよ。」

当事務所 「了解です。引き続き、この点は注意して見てゆきましょう。やはり、人件費がコストに占める割合は大きいので、全店黒字化のためには、目標人員へ絞りこめるか否かがキーポイントです。御社は、人の投入量は決して少なくないので、あとは、仕事の割り振り方だと思います。」

社長 「了解だよ。」

目標の設定の仕方は、ほかの勘定科目でも同様です。

旅費交通費、通信費、リース料、消耗品費、販促費、交際費、設備投資等々。

本質的には同様の方法で目標値を設定して、コスト削減を実現することができます。

コストダウンの成功原則

卸売り、小売、メーカー、建設、サービス業、IT、不動産業、クリニック等々、いかなる業種においても、人件費、経費削減のコツは変りません。

大切なのは、組織の全員が適切な目標を理解し、実績値がその目標からはずれたら、警報がなるPlanDo・Check・Actサイクルの仕組みがあるかどうかです。

無駄なコストは必ず発生します。

大切なのは、その無駄を早期に発見して迎撃する経営管理システムがあるかどうかです。

いわゆる予算管理制度です。

価格競争はあらゆる業界で激化しています。

人件費や経費を厳しくチェックしなければ、利益を出すことはできません。

目標が網の目のように全社で設定され、その達成を確保するPlan・Do・Check・Actサイクルが導入されないと、会社が競争を生き抜くのは困難な時代に突入しています。

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