事業承継のやり方

事業承継のステップ

事業承継は、簡単ではありません。

ステップを踏み間違えると失敗し、会社だけでなく、後継者の人生も壊してしまいます。

事業承継は、後継者教育、社員の理解、代表権の承継、会社の所有権の承継、保証債務の承継といった五つのステップから成り立っています。

このすべてのステップをひとつひとつ丁寧にクリアしないと事業承継は成功しません。

以下、順番にご説明します。

後継者教育

多くの経営者は、自分の子供に会社の経営を継ぐ能力があるのか、不安に思っておられます。

社長にとって会社を経営することは、苦難の連続だったはずです。

自分の子供たちが果たしてその苦難を乗り越えていくことができるのか、心配なのです。

 

この不安を解消するためには、子供たちに経営力を身につけさせるしかありません。

しかし、そもそも、経営者としてやっていくためには、どんな能力が求められるのでしょうか?

わたくしたちは、経営者には、洞察力と人間力の両面が備わっていなければならないと思っています。

何が儲かるのかを見抜く冷徹な観察力と、部下の気持ちを理解する力です。

言い換えれば、なにをやれば儲かるのをかぎつける嗅覚と、人々を動かすリーダーシップです。

異質な異なる二つの能力が求められます。

この二つの能力があって、会社という人の集団を、儲かるビジネスへ導くことができるのです。

 

では、この能力を涵養するためには、どんな教育をしたらよいのでしょうか?

学校の勉強だけでなんとかなるものでないことは確かです。

まずは、他人の釜の飯を食わせるべきでしょう。

他人の会社でまずは働かせろという意味です。

実際に事業承継に成功した多くの経営者が、そうしています。

厳しい環境で鍛えられることによって、業務遂行力だけでなく、他人への共鳴力が身につくのです。

 

企業規模としては、なるべくベンチャー企業に就職させたほうがいいでしょう。

安定的な大企業よりも、必死に伸びようとしているベンチャー企業の方が、学べることが多いはずです。

ビジネスのやり方から、組織のあり方まで、多くのことを学べるでしょう。

大企業の経営スタイルは、中小企業には当てはまらないことが多いので、大企業に子供を預ければ安心だと考えないほうがよいでしょう。

 

よその会社から戻ってきたら、さまざまな部門を計画的にローテーションして、育成していきましょう。

部門ローテーションによって、多角的な視野を身に着けられるだけでなく、古くからいる社員との人間関係も自然に構築していけます。

 

適当な規模の子会社があるなら、その子会社の経営を任せるのもとても効果的な、マネジメントの勉強になります。

製品やサービスの開発から、営業、会社の資金繰り、人の問題まで、経営全般を万遍なく体験できますので、経営の勉強には最適です。

社員の理解の獲得

後継者を幹部にする前に、かならず、社員の理解をもとめるようにしましょう。

ちゃんとしたステップを踏んで、少しずつ理解を求めるようにしてください。

いきなり子供を幹部に抜擢すると、古株の社員が反発することがあります。

経験不足から現場の実態を無視した改革を性急に実行しようとして、古株の社員が反発してやめてしまうこともあります。

古株社員の退職は、社長の思っている以上に会社の力を弱めます。

いきなり、幹部にはせずに、社内をローテーションしながら、徐々に幹部へ昇格させていくべきでしょう。

代表権の承継

代表権の承継も、段階的に実施したほうがよいでしょう。

社長に就任させた後も、いきなり現社長が経営から身を引くのではなく、代表取締役会長に就任し、時期を区切って、共同指導体制をとるべきです。

新社長は急激な変化をもたらそうとして失敗することがありますので、共同指導体制により、慎重に離陸させることができます。

ただ、この場合は、代表取締役会長の任期は明確にするとともに、役割分担を明かにして、新社長が経営の一翼をちゃんと担うようにする必要があります。

社長とは名目だけであいも変わらず会長が経営の実権を握り続けるのであれば、社長は経営者としての成長の機会を失ってしまうかもしれません。

株の承継

代表権の承継とは別に会社の所有権の承継を考えなければなりません。株の承継の問題です。

株式の過半数を所有するものが会社の支配権を握りますので、後継者の経営を磐石のものとするためには、いつかは、新社長に株式の大変を承継させなければなりません。

承継の方法としては、買取、生前贈与、相続、種類株式の発行があります。

いずれの方法にも一長一短があります。

買取、生前贈与、相続について、簡単にご説明します。種類株式については、別の記事でご紹介します。

買取は、正当な対価を払って取得するので、遺留分の争い(相続争い)が生じませんが、後継者が買い取り資金を負担しなければなりません。そのため、高額な評価の株式を大量に承継するのには不向きです。

生前贈与は、自社株対策を十分に行って、実施すれば贈与税の負担は軽減できますが、後日、相続争いが生じる可能性はなくなりません。生前贈与については、遺留分という相続人の最低取り分の規定が適用されることがあるからです。

遺言による承継の場合も、遺留分を考慮しなければなりませんし、先代は、こどもが会社の所有権を承継できたことを見届けることができません。相続人全員が合意すれば、遺言とは異なる遺産分割を実施することができるので、先代からすると不安が残ります。また、相続税が会社の業績によっては跳ね上がり、多額の納税が発生し、後継者及び会社の資金繰りが圧迫されることも起こりえます。

それぞれ長所短所がありますが、生前贈与は、税金対策を実施しやすく、かつ、先代が生きているうちに、事業承継を見届けることができるので、最も代表的な株式承継対策です。

 

ただ、注意すべきは、株式承継の時期です。株式承継の時期は、代表権の承継の後となります。代表権の承継と所有(株式)の承継を同時期に実施する必要はありません。むしろ、間隔をあけるべきです。後継者の経営がある程度、安定するのを見届けてから株式は、承継したほうがよいでしょう。

債務保証の継承

代表権と会社の所有権の承継のほかに、考えなければならないことは、債務保証の承継の問題です。

多くの中堅企業は、社長が、会社の銀行借入金の連帯保証人となっています。

お子さんが、社長に就任すると銀行は、連帯保証人になることを求めてきます。

その際に、前社長の個人保証をはずしてくれるかというとそんなことはありません。社長の個人資産に設定している担保もなかなか解除してくれません。

前社長が実質的にはまだ会社の経営に影響力を及ぼしているであろうし、新社長の経営手腕が未知数で、まだ十分な資力がないためです。

しかし、経営から離れ、かつ、株式ももたなくなった前社長をいつまでも連帯保証人にしておくのは酷な話です。

前社長を連帯保証人からはずように粘り強く交渉するべきです。

そのためには、会社の資金繰りを強くして借入金を圧縮して、少しでも財務指標を改善し、強いポジションで銀行と交渉できるようにしておくべきです。

高い格付けを改善すれば、銀行は交渉に応じてくれます。

 

後継者の立場から見ると、個人保証すべき借入金の大きさが、事業承継のネックとなるときがあります。

事業承継の前には、経営努力により資金繰りを改善させ、借入金を圧縮させ、後継者の恐怖を和らげる努力をするべきでしょう。借金が膨れ上がり続ける状況で事業を承継させれば、『事業ではなく、借金を承継した』と恨まれ続けることもあります。

また、後継者が社長就任後は、個人保証に見合った分だけ報酬を増額させて、個人保証に耐えられるようにしたほうがよいでしょう。

 

なお、金融庁の指導により、経営者保証を全面的に外せるケースも増えてきました。

情報開示をしっかりとして、会社と同族関係者との取引を整理し、会社の財務状況が一定の条件を満たせば、経営者保証をはずしてくれます。

事業承継を機に、積極的に経営者保証を外すように交渉して成功した事例も多々ありますので、まずは、経営者保証をはずしてくれるように交渉してみるべきでしょう。

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