個人事業主と法人とでは、どちらの方が、税金が有利になるか?

税金は所得に税率を乗じて計算されます。

所得は、『収入−経費』で計算されます。

所得が300万円を超える場合は、対策を講じれば、会社形態にした方が、節税となる可能性がでてきます。

さらに、所得が500万円を超える場合は、会社形態にして対策を講じることにより、50万円〜80万円の節税メリットを享受できます。

なぜ、会社を設立すると税金が有利になるのかをひとつひとつ、以下でひとつひとつ、ご説明いたします。


役員報酬の計上

税金計算は、経費を多く計上できれば所得金額を抑えることができ、税金を少なくすることができます。

会社が役員に払う報酬は、会社側では、経費となり、会社の税金を減らします。

一方、社長個人側では、給与として所得税課税がされます。

「行ってこい」の印象を受けますが、給与が所得税課税されるときは、「給与所得控除」が差し引かれてから税率がかけられるので、「給与所得控除」の分だけ、税務上は有利です。

個人事業主の場合は、この給与所得控除がとれません。

 

簡単な例でご説明します。

仮に、会社が社長に払う年間報酬が800万だとしましょう。

会社は、まず、800万円だけ課税所得を減らせます。

社長個人は、給与として800万円を所得税課税されます。

ただ、給与への課税は、給与所得控除200万円を差し引いてからの課税となります。

この給与所得控除分だけ、税金を減らせるのです。

給与所得控除200万円×実効税率30%=60万円

の節税メリットを享受することができるのです。

 

税率の差異

所得税と住民税を加えると、個人事業主の最高税率は、55%にもなります(個人事業税は考慮せず)。

それに対して、法人の場合には、最高税率は、事業税を加えた実効税率でも、約35%です。

したがって、利益がたくさん出るのであれば、法人の方が、税率だけをみても有利です。

 

家族や親族を役員にする

個人事業主の場合は、対価の見合いとなる、業務が実際に行われているかどうかが、かなり厳しくチェックされます。

それに対して、会社の場合は、役員になると、法律上の経営責任が発生するので、その分だけ、役員報酬は、認められやすくなります。

子供を役員にすることも可能です。

役員報酬に対して所得税がかかりますが、他に収入がなければ、所得税が発生しないか、あるいは、とても低く抑えられますので、結果としてかなりの節税になります。


家族二人に会社を手伝ってもらったとしましょう。

それぞれに年間100万円の役員報酬を支払い、かつ、その2人に他の収入がなければ、次の節税メリットを享受できます。

「年間役員報酬100万×2人×実効税率35%=70万円」

個人へ所得税を発生させずに、会社の節税をはかることができます。

 

退職金の支給

また、会社の場合には、5年以上勤続した役員に対する退職金は、税務上のメリットを受けることができます。

退職金の所得税の計算方法は、退職金額から退職所得控除を控除した金額をさらに2分の1にして分離課税をするので、税額は給与所得と比べて格段に少額となります。
さらに死亡時の退職金は、相続税の非課税枠がありますので、相続税法上も有利です。

 

保険の活用

保険についは、個人事業の場合には、節税できる金額は僅少です。

しかし、法人の場合には、保険商品によっては、大きな節税メリットを享受できます。

会社が契約者となり、受取人が会社の定期保険は、100%経費計上可能です。

解約したときに支払った保険料のほぼ100%を取り戻せるのに、支払時に保険料の一定額を経費計上できる保険商品も広く利用されています。

 

借上社宅

社長、役員、従業員が住んでいる賃貸物件を会社で借りて、社員へ貸すという方式をとるだけで、家賃の80%〜90%を経費にして、節税できるようになります。

相当額の節税が期待できる手法です。

 

出張手当

出張旅費規程を作成して、出張手当を明記することにより、実費とは別に出張手当を会社から支給して、経費として処理できます。

非課税ですので、社長には、所得税は課税されません。

まるまる、会社の経費になります。

出張手当は、会社の状況によっては、日額1万円は、設定できるので、かなりの節税となります。

 

減価償却の計上

個人事業の場合には、減価償却は強制ですが、法人の場合には、任意償却です。

ですから、利益がでなかった年は、減価償却を実施せずに繰延べることができます。

 

欠損金の繰越控除

収入より、経費が大きいと(収入−経費)が赤字となります。

この赤字を欠損金といいます。
欠損金は、青色申告を要件に翌期以降に繰越し、課税所得金額から控除することができます。

翌期以降の税金を減らせる効果があるということです。

この繰り越せる期間が、個人事業は3年間であるのに対して、法人の場合は、9年間繰り越すことができます。

法人の場合には、より長く赤字を繰り越せるので、将来の課税所得と相殺して、より大きな節税メリットを享受できる可能性が高くなります。

 

消費税の節税 -2年間の免税期間

 消費税が課税されるのは、次のいずれかに当てはまるときです。

  • 期首の資本金が1,000万円以上。
  • 2期前の課税売上高が1,000万円超
  • 前期の最初の6ヶ月の課税売上および給与等支払額がともに1,000万円を超えたとき。事業規模が急速に大きくなったときは免税期間が短縮されるのです。

したがって、資本金1,000万円未満の会社を設立した場合は、事業規模が急速に大きくならない限り、すくなくとも設立2期目までは、消費税は課税されません。

課税売上高が1,000万円を超えた事業年度の2年後の事業年度にはじめて消費税がかかります。
ですから、個人事業者が、課税売上が1,000万円を超えてしまったら、その年から2年を経過する前に、資本金1,000円未満の会社を設立し、ビジネスを「法人成り」させれば、事業規模が急速に大きくならない限りは、さらに法人成り後の2年間も、消費税の課税義務を免れる免税メリットを享受できます。

 

相続上のメリット

個人事業の場合、保有するビジネスで使っている資産等はすべて個別に相続の対象となります。

税金の納付を行うために、相続したビジネス用の資産を売却して現金化して納付したり、特例で認められる物納により税金を納めたりすることにより、重要な事業用資産が処分されてしまうといったことが少なくありません。
保有していた土地や建物、運転資金等が、分散して相続されることにより、事業用資産が分散することもあります。

これでは、事業承継は、うまくいきません。

また、個人事業の場合は、個人が許認可を取得しているので、事業者が死亡することにより、許認可の継続が困難となったりすることもあります。
こういった事態が発生すると、ビジネスの継続そのものが難しくなります。

 

これに対して、「法人」の場合、株式の過半数を、ビジネスの承継者が相続すれば、経営を継続することは、比較的に容易です。

事業用資産の分散や、許認可の継続は、通常は、大きな問題とはなりません。

これは、事業承継対策上は、大きなメリットといえます。

 

また、会社は、相続税上、特殊な評価をするので、相続対策がしやすいという特徴があります。

時間をかけて対策を施せば、相続税額を、飛躍的に減額させることは、難しいことではありません。

資産がある会社や利益剰余金が蓄積した会社では、相続税額を、個人事業主の場合と比べて、数十分の1に圧縮する対策は、頻繁に実施されています。

 

税金上のデメリット
  • 均等割税額(最低7万円)は、赤字であっても発生します。
  • 接待交際費は、年間800万円超えると損金にできません。年間800万円を超えると使った分だけ税金が比例的に減るという効果がなくなります。一方、個人事業の場合には、接待交際費は全額損金にできます。ただ、どちらの場合も社長個人の飲み食い等のために使った支出はそもそも接待交際費に該当せず、損金にはなりません。税務調査の際には、個人事業の方が、事業主個人の飲み食いのために支出されたのではないかというチェックがより厳しく行われる傾向があります。

 

その他のデメリット
  • 個人事業主の場合は、従業員が4人以下であれば、社会保険に加入する必要はありませんが、会社の場合には、社会保険に加入しなければなりません。
  • 会社設立には、登録免許税や定款認証費用などの費用がかかります。株式会社なら20万円、合同会社なら、6万円の費用が最低限は発生します。
  • 会計処理が複雑となり、申告も複雑となるので、税理士報酬の費用も、大きくなります。
  • 会社は、登記により法人挌が与えられるので、登記が義務付けられています。役員や発行済株式数などの登記事項に変更が生じると、変更登記をしなければならなくなるので、登録免許税や司法書士への手数料が発生します。

 

総合的な判断

一方では、会社には、次のような税務以外のメリットもあります。

  • 社会的信用を得やすい。
  • 採用も有利となる。
  • 公的な創業時の融資は、無保証・無担保です。会社の場合は、社長は、完全に免責されます。会社がつぶれても、借金について責任を負う必要はありません。一方、個人事業主の場合は、個人で借りているので、破産でもしない限りは、免責されません。借金に限らず、法人格と個人とは、別人格とされていますので、個人保証を入れない限りは、会社の負債に対して社長は、責任を取る必要はないのです。

 

上記のメリット、デメリットを総合的に判断して、会社化するかどうかを決定されるべきでしょう。

 

会社設立の基礎知識

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