自社株の承継方法

後継者が事業を承継して、安定的に会社を経営するためには、少なくとも自社株式の50%超を承継しなければなりません。株主にはさまざまな権利がありますが、もっとも大切なのは役員を選任、または、解任する権限です。後継者の持分が50%を割り込むと最悪の場合には、取締役を解任される恐れが出てきます。

 

自社株式の承継方法には、4つあります。

それぞれに長所、短所があり、場面により使い分ける必要があります。

 

  1. オーナーからの株式買取
  2. 生前贈与
  3. 遺言による相続
  4. 対策を講じないで、相続人の遺産分割協議に委ねる。

 

個々の方法についてご説明する前に、遺留分という民法上、相続人に与えられている権利について理解していただく必要があります。

⇒遺留分についての説明へ

 

以下、自社株式の4つの承継方法について解説いたします。

 

▼オーナーからの株式買取

後継者がお金を出して、株式を買い取る方法です。

この方法で承継した場合は、相続や贈与によって承継したのではなく、適正な対価を出して買い取るので、遺留分の問題は生じません。

ほかの相続人から、『こっちに分けろ!』とは言われません。

ただ、欠点は、後継者が買い取り資金を用意しなければならないということです。

自社株式の評価は、オーナー一族の場合は、相続税法上の『原則的評価方法』を基に評価されるため、一株当りの評価額が高くなる傾向にあります。

また、遺留分の計算をするときの株式の評価額は、時価なので、業績のよい会社の場合には、DCF等を加味して評価額が決定され、さらに評価額が高くなってしまいます。DCF

とは、会社のキャッシュフローから株式の評価額を算定する方法です。業績がよく、資金繰りのよい会社の株式は、高く評価されます。

そのため、この方法では、後継者の資金負担が重くなるとともに、自社株式の一部しか承継できない場合があります。

 

▼生前贈与

オーナーが生きているうちに、株式を後継者に贈与する方法です。

贈与ですので、遺留分の問題が将来、発生する恐れがあります。贈与した自社株式は、オーナーの遺産に加算されて、遺留分は計算されます。

また、贈与税の場合は、比較的に少額の財産にも高い税率がかけられるので、あまり多くの財産を移転できないという欠点もあります。

しかし、それでも、生前贈与は、株式の承継においてはもっとも有効な方法です

なぜなら、ほかのページで詳述する自社株対策によって株式の評価を抑えて贈与税を大きく減らすことが可能だからです。

また、遺留分についても、オーナーが生きているうちにほかの相続人を説得し、遺留分相当額に達しなくともある程度の遺産分割用の財産を用意しておけば、揉め事になることはほとんどありません。

そしてなによりも、この方法によれば、オーナーが生きているうちに、事業承継を完了することができるのです。オーナーは事業が無事に承継されたことを見届けることができます。

以下で説明する遺言による方法は、たとえ、公正証書による方法によったとしても、相続人全員の合意があれば、遺言とは異なった方法で遺産が分割されてしまうことがあります。

後継者が情にほだされたり、言いくるめられたりして、事業承継に必要な自社株数を失い、事業承継がうまくいかなることもありえるのです。


▼遺言による株式の相続

遺言によって株式を承継させる方法です。

遺言には、三つの種類があります。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言

それぞれ、長所と短所がありますので、自分にあったスタイルを選択する必要があります。

ただ、事業承継の場合は、従業員も含めて影響を受ける利害関係者が多いので、公正証書遺言の方法をとるのがお薦めです。

遺言の方式については、詳しいことは、次のページをご覧ください。

⇒『遺言の方式について』

 

遺言による方法は、一見するとすぐれた承継の方法にように見られますが、その内容によっては、遺留分の問題が発生する恐れがあります。

オーナーの思いを遺言に記載して、家族の結束をはかるなどの方法を推奨する事業承継コンサルタントも多々いますが、権利意識の発達してきた現代において、遺留分が著しく侵害された場合には、遺言書のメッセージは、限られたインパクトしかありません。

また、相続はいつ発生するかわからないので、そのときたまたま会社の業績が好調であったり、株式や土地の時価が高かったりすると、相続税額が跳ね上がり、後継者や会社に相続税の資金負担が重くのしかかってしまうことがあります。

 

▼対策を講じない

買取も生前贈与も、遺言もない場合には、オーナーの遺産は、遺産分割協議により分割されます。

後継者ではない相続人が権利主張した場合には、後継者は法定相続分の自社株式しか承継できません。

自社株式の所有比率は、会社の支配権そのものです。

後継者とほかの相続人の株式所有率が同率であったりしたら、揉め事がおこった場合に解決不可能となり、経営に重大な支障が生じます。

後継者は、会社に対する支配権を失い、事業の継続はとても困難になるでしょう。

先代が株式の承継をいい加減に考えれば、当然に、会社の所有権もはっきりしなくなり、経営は立ち行かなくなります。

 

わかり易いように、それぞれの長所・短所を一覧表にまとめました。

 

株式の承継方法

長所

短所

オーナーからの株式買取

  • 遺留分の問題を生じない。
  • 資金負担が重くなるときがある。
  • 買い取り資金が必要とされるために、多くの自社株式を承継させることができない。

後継者への生前贈与

  • 贈与税は自社株対策によって減らすことができる。
  • オーナーが生きているうちに事業を承継させられる。

 

  • 自社株対策を実施しないと、わずかな自社株贈与でも贈与税の負担が大きくなることがある。
  • 他の相続人へ、遺産分割用の財産を用意して説得をきっちりやっておかないと、遺留分をめぐる争いが発生する。

遺言による承継

  • 遺言を書くことによって、後継者が自社株式を承継するようにすることができる。
  • そのときの会社業績や経済状況によって相続税額が跳ね上がることがあり、税金対策がしづらい。
  • 遺産分割用の財産を準備しておかないと、遺留分の問題が発生する恐れがある。

対策を講じない

  • 後継者が経営権を維持するために必要な株式数を確保できない恐れがある。
  • 会社業績や経済状況によって相続税額が跳ね上がることがあり、税金対策がしづらい。


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▼事業承継対策の基礎知識 

  1. 事業承継のやり方 承継の進め方とスケジュール
  2. 後継者教育のやり方 最重要な事業承継対策です
  3. 遺言の方法 遺産分割の争いを回避しましょう。
  4. 遺留分について 
  5. 自社株の承継方法
  6. 遺留分に関する争いを回避する方法
  7. 遺産分割をめぐる争いの回避方法
  8. 相続人等に対する売渡請求 分散した株式を取り返しましょう
  9. 相続税の納税資金の確保の方法 
  10. 自社株の株価対策 株価対策により相続税、贈与税は大幅減額が可能です。
  11. 役員退職金による自社株の株価対策
  12. 従業員持株会による株価対策
  13. 投資育成株式会社からの出資 相続、贈与税を大幅に減額可能です。
  14. 高収益事業の分社化 強力な株価対策です。
  15. 合併による自社株の株価対策 
  16. 持株会社による自社株の株価対策
  17. 自社株式の納税猶予制度 相続税、贈与税を大幅に減額できます。
  18. 社長の会社への貸付金 会社への貸付金は、相続税負担を重くします。
  19. M&Aによる事業承継
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