会社の値段
税法を鵜呑みにしていたら損をする
最近は、中小企業も売り買いがされるようになってきました。
会社の売買する際は、会社の適正な値段を知らないと大損をすることがあります。
適正値よりも安く売って損をしたり、逆に、高値掴みをしたりしてしまいます。
税法は、株価算定方式を定めていますが、税法の評価の仕方は、必ずしも会社の実力を反映していません。
会社の実力を客観的に評価するのが困難なために、税法は、わかりやすい単純な評価基準を選択しているためです。
税法基準による評価を信じて、会社の売り買いをすると、不当な安値で買いたたかれたり、逆に適正な値段よりも高値で掴まされたりすることが起こります。
会社の値段は、将来、生み出される現金の合計で評価するのが原則です。
現金収支には会計上の恣意的な見積もりが影響しません。
対象会社が稼ぐ現金そのもので評価するのでわかりやすく確実です。
また、過去の財務諸表を分析すれば将来のキャッシュフローはだいたい予測できるので客観的な予測が可能です。
企業活動は、再現性が強いからです。
これらの理由から、会社のM&Aでは、キャッシュフローを予測して会社の値段を決めるやり方が、広く採用されています。
会社の値段は、フリーキャッシュフローで算定する
会社の値段のことを株主価値といいます。
会社の価値は、株主が保有する価値だからです。
株主価値は、つぎのようにして計算します。
事業価値+非事業価値-債権者価値=株主価値
事業価値とは、会社の事業の価値です。
会社の本質的な価値です。
非事業価値とは、遊休地やゴルフ会員権などの事業に関係ない資産です。
これらの価値の合計から債権者への借金を引いたものが、株主価値、すなわち、会社の値段です。
会社の値段、すなわち、株主価値の根幹をなすのは、事業価値です。
事業価値は、フリーキャッシュフローで評価されます。
フリーキャッシュフローとは、投資家に自由に分配できるお金です。
資金収支として計算されます。
具体的な算式で示しましょう。
予測期間の≪当期利益+減価償却-運転資金の減少分-設備投資≫+継続価値
この算式は、会計の当期利益を修正して、フリーキャッシュフローを求めています。
減価償却費を足して設備投資を引いているのは、会計の利益と資金収支がずれているためです。
会計は、設備を買った時点では費用化せずに、減価償却費を通じて数期に配分します。
資金繰りよりも、認識時点が遅いのです。
資金収支とするためには、設備投資を買った時点で全額をマイナスして、数期に配分されてしまっている減価償却費を足しこむ必要があります。
在庫や売掛金の増加で食われる資金も、事業継続に必要な資金なので、投資家には分配不可能な資金です。ですから、マイナスします。
継続価値は、詳細な予測をする事業期間終了時の会社の価値です。
これも、予測期間以後のフリーキャッシュフローをもとに算定します。
投資家の要求する利回りも評価に反映する
将来の予想フリーキャッシュフローを合計して、事業価値を求める際には、割引いて少なめに評価します。
投資家が要求する利回りを考慮する必要があるからです。
例を挙げて説明します。
株主や債権者などの投資家が要求する利回りが、平均して10%であるとしましょう。
この場合は、投資した100円は、1年後には、110円に増えてくれないとペイしません。
100円×110%=110円
2年後には、121.1円です。
100円×110%×110%=121.1円
逆に言えば、1年後に予測される110円、2年後に予測される121.1円は、投資家にとっては、100円の価値しかないのです。
会社の値段を評価する際には、将来の予想フリーキャッシュフローは、現時点では、より小さな価値しかないと判断します。
その際の割引率は、投資家が要求する利回りを使用します。
未公開株式への投資なら、株主は、すくなくとも10%を超える投資利回りはほしいですね。
なぜなら、未公開企業は経営が安定せず、倒産して投資が全く回収できなくなってしまうリスクがあるからです。
会社の値段を知って防衛しよう
フリーキャッシュフローで算定した会社の値段は、税法の規定で算定した会社の値段とはほとんどの場合、まったく異なります。
税法の規定は、税金を算定するために単純な基準を採用してしまっているからです。
税法基準は、会社の客観的な価値を表しているとは言えません。
ところが、M&Aの場面では、税法基準で会社の値段を算定してしまい、それを鵜呑みにしてしまうことがよくあります。
その場合は、売り手か買い手のどちらかが、損をしてしまうことになります。
会社のキャッシュフローを予測して、会社の真の値段を算定し、不当な要求に呑まれてしまうことのないようにしましょう。
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