工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政治経済学部卒、公認会計士・税理士。
粉飾決算を見つけたときの銀行の反応と会社がとるべき対応策
銀行マンは、軽微な粉飾決算なら見てみぬふりをします。
会社が粉飾をしていたことが公となれば、支店長や審査に報告書を作成しなければならなくなります。
報告書をまとめるには、実際の利益水準を分析する必要があるので、とても手間がかかります。
忙しい渉外担当の営業マンにとってはとてもいやな仕事です。
それだけではありません。
粉飾が数期に及ぶ場合には、その間のモニタリング責任を問われます。
粉飾決算に基づいてお金を貸し続けたわけですから、しっかりと会社を見ていなかったのではないかと言われてしまいます。
粉飾が表ざたになれば、銀行マンにとってもいいことはありません。
ですから、軽度の粉飾なら、回収とか訴訟とかいった措置をとられることはありません。
粉飾以外の適当な理由を挙げられて新規融資が借りづらくなる程度ですみます。
ただ、最近は、軽度とは言えない粉飾が増えています。
粉飾の程度がひどくなると、それに応じて銀行の態度は厳しくなってきます。
中度以上の粉飾がばれ、それを認めた場合には、新規の借入は、不可能となります。
さらに、悪質な場合には、一括返済を求められます。
中には、損害賠償を請求されたり、あるいは、刑事告発をされたりするケースもあります。
会社のみならず、取締役自身が民事上の責任を負います。
粉飾決算により、違法配当を行った場合には、取締役は、会社へ賠償責任を負います。
また、粉飾決算により計算書類等の重要事項に虚偽の記載をし、銀行などの第三者に損害を生じた場合は、その第三者に対して賠償責任を負います。
ここで注意しなければいけないのは、会社だけでなく、社長自身が責任を問われるということです。
刑事上もさまざまな罰則が用意されています。
詐欺罪に該当すれば、懲役もありえます。
粉飾により違法に利益配当を行ったと判断されれば、違法配当罪に該当する恐れがあり、その場合も、刑罰が課されます。
自己又は第三者の利益を図り、その任務に違背して会社に損害を与えた場合には、特別背任罪に該当する恐れがあり、その場合も、刑罰が課されます。
銀行が、より強硬な措置をとるかどうかは、粉飾の金額と借り入れした金額によって決まります。
粉飾により水増した金額が、利益に占める割合や、粉飾により借り入れした金額が大きければ、大きいほど、その分だけ銀行のとる対抗措置は厳しいものとなります。
新規借入停止、一括返済、民事訴訟、刑事告発と厳しくなっていきます。
粉飾決算の泥沼から抜け出す方法
粉飾は、会社をどんどんとむしばんでいき、いつかは、会社は、袋小路に追い詰められます。
銀行に正直に相談しても助けてはくれません。
そんなことをしても、金融支援を打ち切られてしまうだけです。
粉飾から抜け出すには、経営計画に基づく、計画的な解消策しかありません。
経営計画に基づいて解消策を実施すれば、会社を強くするだけでなく、節税も図れます。
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