ぎりぎりまで追い詰められた会社が実施すべき資金繰り改善手法について解説させていただきます。

 

資金残高が月商の1ヶ月分を割り、かつ銀行から新規融資を断られた状態を想像してください。

きれいごとなど言っていられません。

ここまで追い詰められたら、リストラをすばやく果敢に実行して、資金繰りを改善させる以外に生き残る道はありません。

 

まず、事業を、部門別、商品別、顧客別に切り分けて会計データを分析します。

事業を儲かっている部分と損をしている部分に切り分けるのです。

数年以上、存続した会社であれば、足をひっぱっている部門、商品、顧客は必ずあるはずです。

会計データをひっくり返して、損を増大させている諸悪の根源を突き止めるのです。

直接的に発生している売上原価だけでなく、関連する人件費や販売費、管理費も適切に配賦計算して、営業利益ベースまで計算してください。

 

よく直接原価計算の教科書に、売上から変動費を引いた貢献利益がプラスなら、固定費を回収しているのだから、販売を継続するべきだというような設例がありますが、それは長期的には誤りです。

ビジネスを継続するべきかどうかという判断は、長期的な判断ですから、固定費が回収できず、営業利益が出ないような事業は、潰すべきなのです。

 

営業利益が出ていない部門、商品、顧客からは撤退してください。

当然に、それにかかわる人件費もカットしなければなりません。

解雇、給与カットを断行して、人件費を削減するのです。

 

日本は、整理解雇に関してはとても厳しい判例があり、法律的には簡単には、解雇はできないことになっています。人員整理の必要性、回避努力、被解雇者選定の合理性、手続きの妥当性という4要件を満たさなければなりません。

とくに、被解雇者選定の合理性は、リストラを実行する際には、大きな障害です。業績や能力といった考課要素に基づく解雇対象者の選別はできないことになっているのです。

しかし、それでも、死ぬか生きるかの会社は、リストラを断行しなければなりません。

利益を生み出していない部門、商品、顧客を関連する人ごとリストラするのです。

 

現金残高が月商を下回り、銀行から新規融資を断られたら、きれいごとは言っていられません。

非常な意思でリストラを断行する以外に道はありません。

資金は血流です。

一瞬でも止まったら、会社は潰れます。

資金繰りにこまったら資金ショートを避けるために会社はあらゆる対策を講じなければなりません。

人件費や経費を削り、売れるものはすべて売却して資金を確保するのです。

 

不動産があれば、それを売却してその代金で借金を返済すれば、資金繰りがぐっと楽になります。

しかし、所有不動産は、事業を続けるためには不可欠である場合が多く、また、そもそも、銀行の担保に入っている場合がほとんどです。

こういった場合には、「セールスアンドリースバック」という資金調達の手法があります。

不動産を売却して、買主から貸してもらうのです。

売却代金を借金返済に充てるのであれば、銀行も売却に同意して担保をはずしてくれることも少なくありません。

不動産は、リースバックすれば、以前と同様に事業を継続できますし、会社が体力を取り戻したら、買い戻せばよいのです。買戻し条項は、売買契約書に折りこむこともできます。

買い手も、リースバックにより収益が安定しますし、将来の買い戻しを約束してもらえるのであれば、投資リスクを減らすことができます。

 

借入金の返済が延滞し続けると、銀行は、最後には、担保不動産を競売にかけてきます。

競売手続きに入ったからといって手遅れではありません。

競売の申し立てから開札期日までは、半年以上を要します。

この間に、リースバックしてくれる買い手を見つけて任意売却をするのです。

銀行が、任意売却に応じてくれないのではないかと思われるかたも多いのですが、実際には、そんなことはありません。

実は、競売というのは、銀行にとってはとてもリスクのある回収行為なのです。

競売手続に入ると、裁判所が競売不動産の価額を定めます。「売却基準価額」です。

売却基準価額は、物件に応じて20%から50%ほど、実際の時価より低めに設定されます。

競売に持ち込んだからといって銀行は、売却基準価額だけお金を回収できるとは限りません。落札価格がこの売却基準価額を割り込むことや、競売が流れてしまうこともあります。

ですから、売却基準価額ぐらいで任意売却をするのであれば、銀行は抵当権をはずしてくれることがあります。

 

セールスアンドリースバックによって、会社の資金繰りが改善するだけでなく、銀行からの評価を改善することもできます。

セールスアンドリースバックにより、いくつかの経営指標が改善するために、銀行の格付けが良くなるのです。

総資産と有利子負債が減るので、総資本利益率といった収益性の指標、自己資本比率といった安全性の指標、債務償還年数といったキャッシュフローの指標が改善します。銀行の格付けは、これらの経営指標の加重平均なので、点数が高くなり、より上の信用格付けを得ることができるのです。

万策尽きて、どうしても資金繰りができなくなったら、支払いを止めなければなりません。

お金がない以上は、頭を下げて理解を求め、延べ払いにするか、あるいは、支払いを待ってもらうしかありません。

 

支払いにもいろいろと種類がありますが、会社の支払いは、次の5つに分類できます。

  • 銀行借入の返済
  • 経費
  • 買掛金
  • 人件費
  • 税金、社会保険料

 

みなさんならどこから支払いを止めますか?

難しい選択です。

支払いを止めても支障がない相手先などありません。

しかし、資金が底をついた以上は、そのなかでも重要性を決める必要があります。

 

銀行借入の返済を優先させる経営者が少なくありません。銀行というと大きくて恐ろしそうだし、個人でも連帯保証しているのでさらに怖さを感じるのでしょう。

しかし、それは誤りです。

支払いストップの優先順位の正解は、銀行借入の返済、税金・社会保険料、経費、買掛金、人件費の順です。

 

銀行は経済的な合理性があれば、返済額の減額に応じてくれます。

税金・社会保険料も同様です。

経費で受けるサービスは、商品、製品や社員ほどには経営上は重要ではありません。

仕入先も経済的に合理的であれば、支払を猶予してくれるかもしれませんが、人は給料が遅配になったら、おしまいです。

給料は、生活原資なので、遅配になったらすぐに働いてくれなくなる恐れがあります。

社員がいなくなったら、その時点で会社は実質的に消滅します。

ですから、人件費の遅配は、最後に来ます。

社員に甘えてこの順番を間違えると大変なことになりますので、注意してください。

資金繰り改善の仕方について、とびとびにはなりますが、今後いくかの手法を紹介してく予定です。

今日は、事務所賃料の値下げ交渉の仕方についてご説明させてください。

どの企業でも、事務所賃料は、大きな負担となっていますので検討される価値があるはずです。

 

いったん賃貸物件に入居すると、ほとんどの会社は、契約時の賃料をそのまま払い続けています。

しかし、事務所賃料は長期的には、低価傾向にあります。

会社の数が減少しているからです。

あらゆる価格は、需要と供給の関係から決まりますので、当然に賃料は低下していきます。

同じ賃貸物件でも、時の経過とともに、賃料は安くなっていくのです。

好条件で入居できたなと思っても、あとから入った借り手は、もっと安く借りていることが少なくありません。

 

賃料の減額交渉は、法律的には、更新時に限らず、いつでも請求することができます。

借地借家法に基づき、合理的な根拠があれば、借主は賃料の減額を請求する権利があるのです。

合理的な根拠とは、固定資産税の減少、土地や建物の価格の低下、経済事情の変動、周辺の賃料相場の低下です。

 

事務所賃料の減額を成功させるためには、客観的な資料を作成する必要があります。

土地や建物の価格低下、経済事業の悪化、周辺の賃料相場の低下について客観的な資料を作成して、貸主に突きつけて減額交渉に臨んでください。

貸主が減額に応じず、らちが空かなければ、簡易裁判所に調停を申し込むこともできます。

調停でもまとまらなければ、最終的には、訴訟で決着をつけることになります。

ほとんどの大家は、裁判所での煩雑な手続をとてもいやがりますので交渉の段階で賃料の減額を受け入れてくれることは少なくありません。

説得力があって分量のある資料を準備できれば、貸主は裁判になっても負けそうだと恐れて、折れてくる可能性は高まります。

 

大家と争うのが面倒だということであれば、成功報酬で賃料交渉をする業者さんが多々いますので、ご活用を検討してみてください。