工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。
不動産のセールスアンドリースバックにより資金繰りを劇的に改善する
資金は血流です。
一瞬でも止まったら、会社は潰れます。
資金繰りにこまったら資金ショートを避けるために会社はあらゆる対策を講じなければなりません。
人件費や経費を削り、売れるものはすべて売却して資金を確保するのです。
不動産があれば、それを売却してその代金で借金を返済すれば、資金繰りがぐっと楽になります。
しかし、所有不動産は、事業を続けるためには不可欠である場合が多く、また、そもそも、銀行の担保に入っている場合がほとんどです。
こういった場合には、「セールスアンドリースバック」という資金調達の手法があります。
不動産を売却して、買主から貸してもらうのです。
売却代金を借金返済に充てるのであれば、銀行も売却に同意して担保をはずしてくれることも少なくありません。
不動産は、リースバックすれば、以前と同様に事業を継続できますし、会社が体力を取り戻したら、買い戻せばよいのです。買戻し条項は、売買契約書に折りこむこともできます。
買い手も、リースバックにより収益が安定しますし、将来の買い戻しを約束してもらえるのであれば、投資リスクを減らすことができます。
借入金の返済が延滞し続けると、銀行は、最後には、担保不動産を競売にかけてきます。
競売手続きに入ったからといって手遅れではありません。
競売の申し立てから開札期日までは、半年以上を要します。
この間に、リースバックしてくれる買い手を見つけて任意売却をするのです。
銀行が、任意売却に応じてくれないのではないかと思われるかたも多いのですが、実際には、そんなことはありません。
実は、競売というのは、銀行にとってはとてもリスクのある回収行為なのです。
競売手続に入ると、裁判所が競売不動産の価額を定めます。「売却基準価額」です。
売却基準価額は、物件に応じて20%から50%ほど、実際の時価より低めに設定されます。
競売に持ち込んだからといって銀行は、売却基準価額だけお金を回収できるとは限りません。落札価格がこの売却基準価額を割り込むことや、競売が流れてしまうこともあります。
ですから、売却基準価額ぐらいで任意売却をするのであれば、銀行は抵当権をはずしてくれることがあります。
セールスアンドリースバックによって、会社の資金繰りが改善するだけでなく、銀行からの評価を改善することもできます。
セールスアンドリースバックにより、いくつかの経営指標が改善するために、銀行の格付けが良くなるのです。
総資産と有利子負債が減るので、総資本利益率といった収益性の指標、自己資本比率といった安全性の指標、債務償還年数といったキャッシュフローの指標が改善します。銀行の格付けは、これらの経営指標の加重平均なので、点数が高くなり、より上の信用格付けを得ることができるのです。
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