工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。
リスケをするときの借入返済額の減らし方
資金繰りが苦しくなったときに、銀行にお願いをして借入金の返済条件を変更し、元金の返済を減らしてもらうことをリスケジュールといいます。
銀行は、経済的に合理的であれば、返済額を減額してくれます。
『いまは、確かに資金繰りが苦しいが、一時的に返済を減額して会社を救えば、将来的には、全額を返してもらえる』と判断できれば、リスケに応じてくれます。
それでは、リスケをするときには、いったいどれぐらいまで返済額を減額してもらうべきでしょうか?
具体例で考えましょう。
仮に毎月、総額で50万円の返済をしているとします。
その場合には、返済額をいくらまで下げたらよいのでしょうか?
半分の25万円でしょうか?
あるいは、5分の1の10万円でしょうか?
意外かもしれませんが、返済希望額は0円で銀行交渉に臨むべきです。
さすがに返済額を0円にしたら銀行が認めてくれないだろうと思われるかもしれませんが、このほうがむしろ交渉はまとまりやすいのです。
毎月の返済額が50万円といっても、多くの場合は、複数の銀行から借り入れているはずです。
返済条件は、銀行ごとに異なります。
短期もあれば長期もあるでしょう。
担保をとっているケースもあれば、無担保の借入もあるでしょう。
銀行は、横並び意識が強いで、他行と同じ条件でなければ絶対に返済額は減額してくれません。
しかし、借入条件が異なるので、一律条件を作り出すことはとても困難なのです。
返済額を例えば50%だけ減額したとしましょう。
一見すると平等に思えますが、担保をとっていない銀行は、債権が保全されていないので、担保をとっている銀行よりも不利です。
また、返済額と借入金残高は、比例しません。
借入期間が異なりますし、一括返済の条件の借入もあるからです。
借入金残高は大きいが、当面の返済額の小さな銀行も、この条件に反対してきます。
リスケの際の銀行間の調整はとても難しいのです。
返済額0円は、ある意味、平等です。
すべての銀行への返済額が0円になるからです。
ただ、実際には返済額0円は銀行も受け入れがたいので、最終的には、借入ごとに毎月1万円ぐらいの返済で決着させ、返済額を限りなく0円に近づけるのが理想です。
そもそも、リスケをする会社は、営業キャッシュフローでさえ、ぎりぎりなので、借入金を返済する余裕は全くないケースがほとんどです。
裏返せば、そこまで追い詰められなければ、リスケは認めてもらえません。
リスケの際には、当面の資金繰り表予定表と損益計画書を作成して、借入金の返済を待ってもらえれば会社が潰れないことを示さなければならないのですが、ほとんどのリスケ企業は、仕入や人件費、諸経費の支払がやっとで、資金繰りはぎりぎりの状態です。
返済額0円という依頼は、多くの場合、生き残るためにも必要なことです。
リスケをすると、リスケの最中は、新規融資は認めてもらえないので、その意味からも、返済額をできる限り少なくしておくことは大切です。
資金繰りが悪化しても銀行にはもう頼れないわけですから、借入金の返済額をできるだけ小さくしておくべきなのです。
リスケの期間についても、交渉努力は必要です。
リスケが認められるのは、半年か長くとも1年です。
その期間が経過したらまた、再度、リスケの交渉をしなければなりません。
半年ごとにリスケの交渉をするのは大変です。
必ず、リスケの期間は、1年にしてもらってください。
経営改善の効果を実現するためには、少なくとも1年間の猶予は必要だと粘り強く訴えてください。
金利についても、現行の水準に据え置いてもらいたい旨を要望してください。
返済額を減額してもらったのだから金利が上がるのは、仕方ないと諦めるのは早計です。
実現可能性が高く抜本的な経営改善計画を提出している以上は、債務者区分は正常先以下に下がらないはずです。
格付け自体はさほどは下がっていないのです。
根気よく交渉すれば金利を現行水準のレベルに維持してくれるはずです。
general