借金には、よい借金と悪い借金があります

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

企業経営は、絶対的な経営目標として、無借金経営を目指すべきです。
この場合の無借金とは、実質的な意味での無借金です。
『預金-借入金』の残高が、プラスとなればOKです。
形式的に借入金がゼロとなる必要はありません。
いざというときにために銀行とは付き合っていたほうがよいので、借入金そのものは、あってもかまいません。
借入実績や返済実績がないと、いざというときに銀行は貸してくれないからです。

なぜ、無借金経営を目指すべきなのでしょうか。
それは、より大胆な投資が可能となるからです。
市場が変化してそれに呼応するために投資が必要になったときに会社が借金漬けでは、投資余力は限定され、環境変化に対応しきれなくなります。
既存の事業が行き詰まり、新たな投資をしなければならない。
しかしすでに何億円も借金がある。
こんな状況を想定してください。
あらたな投資が利益を生み出すには、時間がかかります。
利益が出たとしてもわずかです。
借金の返済原資は、基本的には利益です。
すでにある借金とあらたな借金の返済が、新たに生み出される利益にのしかかってくるのです。
ですので、投資の収益性が明確でないかぎりは、不用意に資金調達をして投資をするべきではないのです。

不動産投資のための借入は、どうでしょうか?
借金をして自社不動産を持ちたがる社長がいますが、これは誤りです。
土地を買うと賃料がなくなるので、見せかけの利益が増えますが、借入返済という新たな財務負担が生じますので、会社の財務力は弱くなります。
とくに、東京近郊でへたに不動産投資をすると財務負担が重くのしかかります。
資金繰りが悪くなるので、結果として、会社の資金調達能力も低下します。
損益だけでなく、資金繰りをまでも考慮すると、自社物件は財務的には正しい選択ではありません。

創業時の借入は、どうでしょうか?
創業時の借入は、本業への投資なので、不動産投資とは、性格が異なります。
創業時には借金は、絶対に必要です。
事業を始めるのに、自己資金がたまるのを待っていたら、想定した事業構造を作れないので、ビジネスチャンスを逃すことがあるからです。
創業時の設備投資や在庫などへの投資は、必要であれば、躊躇なく、創業融資により賄うべきです。
創業者を支援する低金利の長期資金が、政府系金融機関により豊富に提供されています。
中には、無担保無保証という破格の要件の融資商品もあります。
利用しない手はありません。

ただ、大切なのは、その借金をできうるかぎり早い段階で0にする経営計画を立て、実行することです。
リアルな経営計画を立て、無借金経営を実現するためのロードマップを明確にイメージするべきです。
具体的には、経営計画の目標利益から逆引きで、売上数量、売上価格、仕入れ単価、採用人員等を決め、緻密に経営をしていく必要があります。
単に金額だけでなく、人員、売上数量までち密に計画を立てることにより、資源配分を適切に決定し、利益を極大化することができます。
経営計画は、正しい意思決定をもたらし、経営者をより早くゴールへ導いてくれます。

general

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