社長が存命中に計画的に退職金を支給して自社株の株価を引き下げる方法です。
社長への退職金は、一般的には次の算式で計算されます。
退職金=最終月額報酬額×役員の在籍年数×功績倍率(2~3倍)
社長の在籍年数はとても長いことが多いので、大きな金額を退職金として支給し、自社株式の株価を劇的に下げることが可能となります。
例えば、役員報酬が150万円で在籍期間が25年の社長であれば、次のように計算されます。
退職金=150万円×25年×3倍=11,250万円
1億円以上の退職金が支給可能です。
ここで再度、自社株式の原則的評価方式のひとつである、類似業種比準価額の算式をご覧になってください。
[類似業種比準価額の算式]
利益の要素は、3倍に加重されており、これを0にすることができれば、自社株式の評価額は、劇的に下がることがご理解いただけると思います。
株価が下がった時点で後継者に生前贈与すれば、少ない税負担で自社株式を移転することができます。
退職金に対する所得税と住民税は、次の算式で計算した退職所得に分離課税されます。
退職所得=(退職金-退職所得控除)×1/2
三つの理由から税負担は、大幅に軽減されます。
- 退職所得控除が差し引かれるのでその分所得が小さくなり税負担が軽減される。
- 所得を2分の1にして課税されるので税負担も2分の1以下となる。
- 分離課税なので、税率が低くなりその分だけ税金が安くなる。
役員報酬として支払うより、退職金としてお金を支給したほうが税負担ははるかに軽減されるのです。
また、この退職金は、後継者以外の子供たちへの代償用の財産として使えば、遺産分割をめぐる後継者とほかの子供たちとの争いの防止に役立ちます。
あるいは、納税資金としても利用できます。
中小企業オーナーの遺産のほとんどは自社株式です。
会社にたくさんお金があっても、会社のお金は、直接的には、遺産分割用資産としても、納税用資金としても使えません。
オーナー個人に移転する必要があります。
社長への退職金の支給は、社長個人への資金移動の最も有効な手段の一つです。
以上の役員退職金支給のメリットをまとめます。
- 社長の退職金は、在籍期間が考慮されるので、多額の支給が可能であり、その多額の退職金は、自社株式の評価をその分だけ下げてくれる。評価額が下がった分だけ、自社株式にかかる贈与税、または、相続税は安くなる。
- 役員報酬として支給するのに比べてはるかに所得税の負担割合が低くなり、税負担が軽減される。
- 支給された退職金は、後継者以外の子供たちのための遺産分割用の資産として活用できる。
- 支給された退職金は、納税資金としても活用できる。
事業承継の個別無料相談会
事業承継対策の基礎知識
- 事業承継のやり方 承継の進め方とスケジュール
- 後継者教育のやり方 最重要な事業承継対策です
- 遺言の方法 遺産分割の争いを回避しましょう。
- 遺留分について
- 自社株の承継方法
- 遺留分に関する争いを回避する方法
- 遺産分割をめぐる争いの回避方法
- 相続人等に対する売渡請求 分散した株式を取り返しましょう
- 相続税の納税資金の確保の方法
- 自社株式の株価対策 株価対策により相続税、贈与税は大幅減額が可能です。
- 役員退職金による自社株の株価対策
- 従業員持株会による株価対策
- 投資育成株式会社からの出資 相続、贈与税を大幅に減額可能です。
- 高収益事業の分社化 強力な株価対策です。
- 合併による自社株の株価対策
- 持株会社による自社株の株価対策
- 自社株式の納税猶予制度 相続税、贈与税を大幅に減額できます。
- 社長の会社への貸付金 会社への貸付金は、相続税負担を重くします。
- M&Aによる事業承継
- M&Aの進め方
- 会社分割して売却する方法 事業の一部を低い税率が売却する方法です。
- 節税対策と税務調査対策
- 銀行融資を調達する方法
- お金を貯める経営
- 株式公開のやり方 メリットと進め方について解説します。