どれだけ現金があれば、リスクに対応できるか?

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政治経済学部卒、公認会計士・税理士。

リスクに対応するために必要な資金

御社のリスクへの対応は万全ですか?
社員の大量離脱、主要顧客の倒産、災害などがあっても持ちこたえることができますか?
社長が大病を患い、しばらく、働けなくなった場合でも大丈夫ですか?
10年、20年と経営をしていれば不測の事態は必ず発生します。
経営は、最悪の事態に備えておく必要があります。
不測の重大リスクが発生するとさまざまなストレスが会社にかかります。
関係者は、悩み苦しむでしょう。
あれやこれやと乗り切るための知恵を絞ります。
ただ、巨大なリスクは、知恵だけでは、乗り切れません。
つまるところ、現金が必要となります。
逆に言えば、関係者の悩みがどれほど巨大であっても、現金があればどんな困難もとりあえず乗り越えられます。
金があれば時間が稼げますし、時間は問題を解決してくれるからです。

では、会社は、どれぐらいの現金保有が、必要なのでしょうか。
それはリスクの大きさによりますが、望ましくは、六か月分の人件費、販管費、借入返済額です。
半年分があれば、次の対策を講じる時間を確保できます。
どんな大きな問題も、半年あれば、解決の目途がたつものです。
この半年分の資金が目指すべき現金保有額です。

保険契約の保険金額なども、この観点から、算定するべきです。ほとんどの会社は、保険契約の内容を、節税額を重視して判断されていますが、それは誤りです。
保険は、本来、節税のために入るものではありません。
リスクへの対応を図るために入るものです。
保険の場合には、社長の遺族の生活も考えて、上記にさらに社長への死亡退職金を考慮するべきでしょう。
保険は、会社が体制をたてなおすのに必要な時間を確保し、かつ社長の遺族が生活に困らないだけの資金を確保するためにはいるものです。

そもそも借入金の目的は?

資金繰りの中で、なによりも会社を脅かすのは、借金返済です。
借金返済は、多くの場合、会社のキャッシュフローに大きな割合を占めています。
借金返済が滞り、資金が枯渇すれば、会社は倒産します。
ですので借金が過大となった会社は、リスクへの対応能力が低い会社と言えます。
めったにはこない、しかし10年から20年に一度は必ずくる大波に対して耐えられない体質になっているのです。

では、そもそも借金はなぜ膨らんでしまうのでしょうか?
それは、借金や利益という基本的な概念が誤って経営者に理解されているからです。
そもそもなぜ借金するのか?
金がないからですか?
この発想で借入をすると借金は膨らみ続けます。
金がありあまる経営などはありえません。
お金がなければその無いなかで切り詰めて経営をするだけです。
借金は、投資を行うとき以外は行ってはだめなのです。
いいかえると、借金による投資によって得られた利益で、返済が確実にできる借入以外はするべきではありません。
借金は、本質的に利益を確保するための投資なのです。
お化粧して、適当な名目で、赤字補填のために借金してはだめです。
そんなことをするから、利益額で返済できないほどの借金を負ってしまい、リスク対応能力の低い会社を作り出してしまうのです。
赤字になりそうになったら歯を食いしばって、踏みとどまらなければなりません。
安易に銀行に頼ってはだめです。

利益も、本当の利益の意味は、多くのかたが考えているのとは違います。
本当の利益とは、この借入返済額を控除した残額です。
この数値がプラスがどうかが大切です。
借金返済額が、利益を上回っていたら、真に利益体質とは言えません。
会社の財務体質の改善を早急に図る必要があります。

そもそも、利益は『儲け』ではないのです
会社を持続成長するための原資なのです。
ですので、投資のための借入を返済してもなおあまりあるレベルでなければなりません。
借金を返済したら、利益額が残りませんという状態は、過剰借入の状態です。
それでは、成長のための次なる投資ができません。
借入額は、持続成長するための原資である利益で返済できる範囲内に抑えるべきです。
そのためには、すなわち支出額は小さくとも効率的な投資をすることが大切なのです。
借入や利益に関する財務的な常識の欠如が、無秩序な借入増加につながり、リスクに弱い会社を作り出してしまっているのです。

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