工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。
創業融資の借入で自己資金が少ないので親からお金を出してもらいました。大丈夫でしょうか?
- 日本政策金融公庫の新創業融資制度について質問です。
新規開業にあたり、自己資金が200万円しかなかったので両親から300万円出してもらいました。
それでも足りないので日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用して、500万円を借りたいと思っています。
でも、ネットでは、自己資金は、3分の1は必要だという記事をよく目にします。
わたしの場合、融資は受けられるのでしょうか?
担保は、ありません。
借入、クレジットカードローン等は一切ありません。
同じ業種で10年以上、勤務してきた経験があります。 -
ちょっと懸念される点があります。
融資審査は、銀行側に自由裁量権がありますので、大丈夫と思わせることができなければ形式要件を満たしていても融資は否決されてしまうことがあります。懸念点についてご説明いたします。
実際の審査では、好ましくは、自己資金は創業資金総額の3分の1はあることが望ましいとされています。
公表はされていませんが、これが実質的な審査の目安となっております。
ご質問者様の場合には、総額が1,000万円なので330万円です。
最悪でも、4分の1の250万円は欲しいところです。
問題は、ご両親からの資金提供です。
ご両親からの資金が、借入なのか贈与なのかをはっきりさせる必要があります。
親とは言え、将来返済しなければならないということであれば、自己資金とはみなされず借入となります。
となると、自己資金比率は、5分の1となり、とても低くなってしまいます。
これでは謝絶される確率が高くなります。
なので、贈与契約書を作り、親から資金を贈与してもらう必要があります。
贈与を受けた場合は、自己資金比率は、2分の1となり申し分はありません。ただ、ご両親の財務状況が良好でないと、贈与契約が締結されたとしてもそれは形式だけであり、実際には将来返済しなければならないのではないかと勘繰られます。
となると、やはり心証はよくありません。
審査担当者からするとちょっとひっかかるところが残ってしまうということになります。
この理由から、親からの贈与の割合が高い場合には、謝絶されてしまうことが少なくありません。
こういった場合には、他の部分でリカバリーを図る必要があります。
具体的には、- 事業計画書をしっかりと作り込む。
- 資金繰り計画を作り込む。
- 事業経験を売り込む。
といった努力が必要です。
まず、事業の仕組み、流れを詳細に煮詰めて、しっかりとした事業計画を作ってください。
事業を詳細に設計し、かつ、損益計画も根拠を明確にして丁寧に作り込めば、審査担当者に信頼感を持たせることができます。
十分な開業準備ができているなと思ってもらえます。また、資金繰り計画を詰めて、必要資金を明確にして、返済計画も実現可能性の高いものをつくるのは、創業融資に限らず、融資対策においては常に有効です。
金融機関は、『できるだけ借りたい』とか『返せると思う』といった曖昧な姿勢を嫌います。事業経験については、勤務経験と、これから創業する事業の強みを関連づけるようにしてください。
自分の強みが、会社の強さを必然的に生み出すという筋書きを作るのです。
また、営業経験をアピールすることは、とても効果的です。
営業実績、社内表彰、マスコミ記事、勤務時代のお客で創業後も付き合ってもらえそうな潜在顧客のリストなどが添付可能であれば、必ず添付してください。ご質問者さまの場合には、自己資金が弱いので、ほかの部分でリカバリーをはかり、全体として合格点に持ち込むように努力されるべきです。
事業経験が長いので、そこで、しつこいぐらいにアピールしておけば、合格点がとれると思います。
general