事業計画書と創業計画書との違いは?

この記事の著者
代表者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

事業計画書と創業計画書の決定的な違い

事業業計画書と、創業計画書は本質的に異なるわけではありません。
創業計画書は、かなり簡便化されていますが、1種の事業計画書です。
ですから、作成方法は大変に似通っています。

ただし、創業計画書は、事業計画とは、異なる点があります。
この相違点を理解して創業計画書を作成しないと失敗するおそれがあるのでご注意ください。

事業経験のア ピールがより重要である。

創業時の会社には、過去の実績がありません。したがって、既存の会社のように過去の財務諸表によって格付けされることはありません。そのかわりに創業者の過去の事業経験をアピールする必要があります。過去の履歴を羅列するだけでなく、事業遂行能力を積極的にアピールする必要があり ます。詳しくは、『創業計画書の書き方』をご参照ください。

自己資金の重要性

創業時に公的融資を受ける際には、小額であっても自己資金のため方は重視されています。なぜなら、創業時の公的融資制度で借り入れたお金を、 既存事業の赤字の穴埋めや、個人の借入の返済のために使おうとする人があとを絶たたないからです。創業時の公的融資は過去の事業の実績を問わないので、既存の借金 の返済に困っているひとたちにも魅力的な融資制度なのです。審査担当者は、この点を大変に警戒しています。結果として、本当に創業のために資金を使おうとしている申込者も、誤解を受けて、融資を断られてしまうこと が実はすくなくありません。したがって、少額でも、自己資金を健全にためてきたことをわからせることがとても重要なのです。創業するためにお金をためてきたなという印象をもってもらえれば、既存事業の赤字や個人の借財を疑われることはありません。創業時の公的融資では、資金が本当に創業目的のために使われると融資担当者に理解してもらうことはとても大切です。そのためには、自己資金のため方を積極的にアピールする必要があります。創業時の公的融資でも、審査担当者には、自由裁量権があります。疑わしいと思われたら、何も理由を告げずに融資を却下する権限が彼らにはあります。自己資金が健全なプロセスで得られたものであることを積極的に示す必要があるのです。

セグメント毎の明細

事業計画書の場合には、各年度における、売上の明細、人員計画、設備投資の中味を別途、セグメント毎に明細化する必要があります。特に売上の明細や根拠は、製品・サービスがいくつかの種類に分かれるので あれば、 その種類毎に計画する必要があります。それに対して創業計画書の場合には、創業者が最初からいくつかの種類の事業にかかわるというのは嫌われますので、基本的には単一事業の計画書となります。

過去の財務諸表

創業計画書の場合には、経営の実績がないので、自由に計画を練ることができます。しかし、事業計画書の場合には、過去の実績値との整合性をとる必要が出てきます。過去の実績を無視して、ばら色の未来を語っても、信用を落とすだけです。現実を直視することができない経営者というレッテルを貼られてしまうかもしれません。過去の損益、資金収支を踏まえて、実行可能な改善策を打ち出し、その改善策に基づき、事業計画は作成されなければなりません。

会社設立後も事業計画書を作る必要があるか?

事業が軌道に乗ると、資金を追加的に投入する必要が出てきます。在庫の買い増し、設備投資、人に対する投資が必要となるからです。
追加資金がなければ、事業の拡大は止まり、停滞してしまいます。
その投入すべき資金を好条件で調達したければ、事業計画を作成しなければなりません。
事業計画がなくても、お金は貸してくれるかもしれませんが、事業計画があったほうがはるかに有利に交渉が進みます。
事業計画は、金融機関との交渉では大変に威力を発揮するコミュニケーションツールです。

銀行との交渉は、営業の交渉と違ってインパクトのあるトークやはでな商品説明は役に立ちません。
過去の実績に基づく、地道な事業計画書が意外と強力なツールとなるのです。
事業計画は、借入を成功させ、返済期間を延ばし、金利を低減させてくれます。

事業計画は、本来的には、経営者が頭を整理して、適切な戦略を考案するための手段です。
ですから、よい事業計画を作成すれば、会社の経営力そのものを強化することにも役立ちます。

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