創業融資で税理士が果たすべき役割をご説明します
税理士は、創業資金を調達する時になにをしてくれるのか?
創業融資の可否は、提出する創業計画書の出来不出来に強く影響されます。
創業計画書とは、創業者のための事業計画書です。
創業融資に強い税理士は、創業計画書の作成を手伝ってくれます。
とくに資金繰りの計画のところは、その創業者のビジネスプランの反映した、オーダーメイドの計画を作る必要があります。
コピペしたような計画だと審査時の評価は下がります。
創業計画書は、経営の核心であり、経営能力そのものです。
よい創業計画書を作るためには、起業家と向き合って、あいまいな思考を排除し、リアルな事業計画を作り、起業家の経営力そのものを強くする必要があります。
経営者の動機付けや強みにあったターゲットに経営資源を集中し、明確なビジネスモデルを確立し、十分に考え込んだ売上予測に基づき損益計画を策定し、資金ショートを絶対に起こさない資金繰り計画を策定する必要があるのです。
言い換えれば、起業家が永続的に生存できるように、真剣にアドバイスをしてくれるということです。
とりあえず、お金が借りることができればよいというアドバイスはしません。
創業計画書が甘ければ、結局、ビジネスはたちゆかず、借金が残るだけだからです。
それは、起業家のためになりません。
創業融資に強く、良心的な事務所なら、『あと少し事業経験を積んでから一緒にチャレンジしましょう』とか、『もうちょっとお金をためてから、半年後にチャレンジしよう』とか、時には、相手を怒らせかねないようなアドバイスをすることすらあります。
残念ですが、ほとんどの税理士は、創業計画が作れません。
ただ、税理士の多くは、創業融資の支援をすると喧伝していても、創業計画書や資金繰り計画の作成にはタッチしたがりません。
手間がかかるからです。
そもそも、ほとんどの税理士は、事業計画の作り方そのものがわかりません。
とくに会社設立で高い広告宣伝費を払って集客している会計事務所は、大量生産をしなければならないので、オーダーメイドの創業計画書はおろか、定型フォームをつかった創業計画書ですらつくってくれません。
会計事務所を選ぶ際には、どんなサービスを受けられるのかを必ず詳細にチェックしてください。
創業融資に強い税理士は、その他にどんなバックアップをしてくれるのか?
日本政策金融公庫と提携している会計事務所の場合は、審査担当者から追加資料等について何回も電話がはいります。
そういった場合に、税理士から創業者に関して肯定的な情報が提供されると審査担当者も安心してくれます。
創業融資に実績のある税理士は、嘘のない範囲で、創業者寄りの情報を発信してくれます。
ですから、創業者の人柄やバックグランドなど、売りこめる材料を仕入れておかなければなりません。
創業融資に実績のある税理士が、面談を必ず行ってから、創業融資のサポートにはいるのはこのためです。
推薦状を発行する税理士もいますが、こういった形式的な文章は、効果がありません。
推薦状を発行したところで、肝心の稟議に影響があるわけではないからです。
もちろん、当事務所でも、懇意の審査担当者へ、ご推薦させていただいておりますし、ベテランの融資担当者が、最初から好印象をもって対応してくれるので、審査が1週間ぐらいは、はやまります。
でも、それは当たり前のサービスであり、それだけは充分ではないのです。
もっと大切なのは、担当者の印象や言葉遣いから、問題点を感知して、リカバリーショットを一緒に考えてくれる専門家が必要なのです。
うまくいかなくなりそうになったときに一緒にもがいているくれる専門家が必要なのです。
金融に仕組みを知っている税理士は、むしろ審査担当者とのやりとりのなかで創業者を支援します。
税理士の紹介であると、なぜ、日本政策金融公庫や信用金庫は、安心するのか?
日本政策金融公庫は、会計事務所を創業者のパートナーとみています。
したがって、起業家が、税理士の支援を受けて創業計画を作ることに抵抗をもっていません。
むしろ、税理士がバックアップして、会社を成功するように指導してもらいたいと考えています。
とくに創業融資の案件をたくさん持ち込む、顧問契約重視型の会計事務所や、緻密な創業計画書を作成する税理士には、高い信頼を置いています。
一方、日本政策金融公庫は、スポットで創業融資を支援することに特化している成功報酬型の税理士やその他の専門家は、あまり信じていません。
契約の形態が顧問ではなく、成功報酬型だからです。
成功報酬ほしさにいい加減な創業計画書を作るだろうと思っているからです。
創業融資だけに特化している税理士等を使うことはかまいませんが、それは、日本政策金融公庫の審査担当者には秘密にしておく必要があります。
自分で創業計画書を作る能力がないものとして、評価を下げられます。
顧問契約型の会計事務所と、創業融資だけに特化した成功報酬型の会計事務所は、日本政策金融公庫にとっては、味方と敵ぐらいの差があります。
日本政策金融公庫にとって、前者は同志であり、後者は、貸し倒れの山をつくる天敵なのです。
起業家からすると、区別しづらいのですが、その事務所や会社のサイトを精査されれば、ある程度は、区別がつくはずです。
成功報酬型の事務所は、本当に、創業融資のことしか説明をしておらず、そのあとの経営支援についてほとんどメッセージがないはずです。
どうやって会計事務所を選べばよいか?
創業融資について実績があり、日本政策金融から信頼されている税理士を選ぶべきでしょう。
どの税理士も、実績があると言うので本物を選ぶのはちょっと難しいのですが、簡単なチェックのしかたをご伝授しましょう。
税理士事務所にいって応接に日本政策金融公庫のカレンダーが置いてあるかどうかを確認してください。
カレンダーが置いてあれば、日本政策金融公庫の担当者が定期的にあいさつに来ているということですから、信頼の接点がある証拠になります。
あとは、ホームページをチェックすれば、実績がある事務所かどうははある程度は判断できます。
経営計画書や事業計画書のサービスを重視している事務所なら、審査担当者に好まれるオーダーメイドの創業計画書を作成してくれるはずです。
多くはありませんが、銀行勤務の経験のある税理士なら、なおさらOKです。
金融機関の審査論理は、やはり、一度内部にいたことがないとわかりません。
手前みそとなりますが、ちなみに当事務所は、所長が銀行出身です。
さらに、起業家にとって、資金調達は、初めての経験なので、きめの細かいサービスを約束している事務所を選ぶべきでしょう。
第一に、高額融資や満額融資を目指す姿勢の事務所を選ばれてください。
緻密な創業計画や資金繰り計画をつくれば、高額融資や満額融資は、難しいことではありません。
逆に、ざっくりとした計画だと、審査担当者がリスクヘッジをして、減額されることが多々あります。
資金不足は、事業規模の縮小を意味しているので、事業が最初から躓くおそれがあります。
また、面接で聞かれるウィークポイントを予測して、丁寧に回答の仕方を教えてくれる事務所を選んでください。
創業後は、銀行との付き合い方は、おのずから身につくでしょうが、初めての面接には、適切なガイダンスが必要です。
また、創業融資にもさまざまな制度があります。
そのなかで、もっとも、リスクが低く、金利の安い制度を丁寧に案内してくれる事務所を選びましょう。
創業融資の面談には、税理士も同席してもらった方がよいのか?
税理士の同席は、税理士が起業家にアピールして料金をもらうためには、効果がありますが、資金調達の観点からは、好ましいとはいえません。
自力ではビジネスプランを説明できないという弱い印象を逆に審査担当者に与えてしまうからです。
むしろ、『この創業者は、かれこれのバックグランドなので大丈夫です』と陰で売り込んでもらった方がよほど、審査担当者の評価はあがります。
陰からのバックアップでないと効果はないのです。
税理士の同席は、お客にアピールするパフォーマンスにはなりますが、実際には、審査担当者の評価を下げてしまいます。
審査担当者にとっては、税理士の同席は、面白くはないからです。
聞きたいことが聞けなかったりすれば、それが疑念となり、評価を下げられてしまいます。
このことは、銀行勤務経験があり、金融機関の意思決定プロセスがわかっていれば、簡単に理解できることですが、税理士のなかにはこのことを理解しておらず、同席することにより、逆に創業者の足をひっぱってしまうことがあります。
当事務所は、文字通り何十人もの日本政策金融公庫の担当者とお話しをしてきましたが、専門家が同席をして余計な発言をした場合、借入申込者への心証が悪くなることはあっても良くなることはないと、皆さんおっしゃっています。
むしろ、専門家から審査担当者にあとで電話をいれてフォローした方が、心証は、飛躍的に改善するのです。
創業融資の基礎知識
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