どれぐらいの利益がでれば合格点なのか?

この質問はよく経営者の方から聞かれます。

言い換えれば、うちの業績は合格点ですかということです。

これは、決しておかしな質問ではありません。

良い質問です。

健全な判断基準をもつことは大切です。

これがわかっていないと、だめな会社なのに経営に問題がないと思い込んだり、逆にうまくいっているのに、不必要な改善をしようとしたりします。

ほとんどの経営者は、決算書を読み間違えている

多くの経営者は、ちょっとの黒字の決算書で満足しています。

黒字なので、銀行に提出しても問題がありません。

適当に言い訳すれば、お金を貸し続けてもらえます。

 

黒字幅が小さいと、税額も大きくはなりません。

税金が小さいとちょっと得をした気持ちになります。

 

しかし、利益額が小さいということは、内部留保が小さいということなので、

いつまでたっても、資金繰りはよくなりません。

 

分かり易く、言うと、現預金が乏しく、ずっと貧乏なままです。

 

そもそもビジネスの目的は、会社を強くすることにあるはずです。

現預金から借入金を控除した実質現預金残高の増加なくして、強い会社は、作りだせません。

 

ですので、ちょっとした黒字の決算書で満足してしまう、決算書の読み方は、間違っているのです。

では、いかなる指標で業績を判断すべきか

利益の絶対額で業績を判断しようとする人がいますが、これは、意味はありません。

当然ですね。

1千万円の当期利益は、従業員100人の会社なら明らかに不合格点ですが、社員数人の会社なら合格点でしょう。

利益の適正額は、会社の規模によって異なります。

ですので絶対額は意味がありません。

 

よく、耳にする売上高経常利益率も適切な判断基準とは言えません。

なぜなら、業種によって粗利率が異なるからです。

たとえば、卸は、粗利率が低くなる傾向がありますし、卸ほどではありませんが、、製造業は人件費がかさむのでやはり低くなりがちです。

卸は、利益率は低くなりますが、比較的小人数で大きな売上を実現できるので、売上高経常利益率が低いからと言って、利益が低いと決めつけるわけにはいきません。

売上高経常利益率が低くても、売上の絶対額が大きくなれば問題ないので、この指標だけでは、意味がないのです。

 

利益の物差しは、会社規模や業種に影響されない尺度で判断するべきです。

結論からいうと、売上から、直接的に外部へ払ったコストを差し引いて計算される限界利益が、固定費を控除したのちに20%以上残るようであれば、利益体質といえましょう。

 

  • 売上高-外部コスト=限界利益
  • 限界利益-固定費=経常利益(限界利益×20%)

限界利益の大きさは会社規模をあらわし、限界利益に対する固定費は、経営効率を意味します。

限界利益の20%が残るようであれば、経営は会社規模にかかわらず、効率的に実施されており、毎年、財務は著しく強化されているということになります。

言い換えれば、会社が作り出した直接的な価値である限界利益の80%で、経営にかかるコストである固定費がまかなえるようであれば、会社は将来投資の原資である利益を十分に確保し、成長を持続できるということです。

限界利益率の20%という利益目標は、会社規模や業種に関係なく、有効です。

業種ごとの業績評価の考え方

話をわかりやすくするために、売上から製品原価を控除した粗利を限界利益としましょう。

 

メーカーであれば、売上から製品原価を引いた粗利から、販売費、物流費、管理部門の内部コストを控除した経常利益が、粗利の20%あれば優良企業と言えます。

将来、大きな設備投資が必要となったときも十分に対応できるでしょう。

 

卸であれば、粗利の絶対額から、販売費一般管理費を控除した金額が、粗利額の20%となっていれば、合格点です。

卸の場合は、見せかけの売上が大きいので、売上高経常利益率は、10%未満となることが少なくありません。

売上高経常利益率が低くとも、経常利益額が粗利額の20%以上となっていれば合格点です。

経営効率という点では健全です。

 

サービスやITは、売上=粗利というケースが少なくありません。

売上高粗利率が100%となってしまい、粗利率は、業績判断の指標になりません。

この場合も、販管費を売上、すなわち粗利の80%に抑えることができれば優良企業です。

売上は、メーカーや卸に比べれば、少なくなりますが、この水準をクリアして、粗利の20%が、経常利益として確保できれば、財務的には優良企業です。

ITやサービス業では、企業規模に比べて、売上は小さくなりがちですが、気にする必要はありません。

限界利益の20%が経常利益として残れば、優良企業です。

残る利益は、高すぎてもいけない

望ましい限界利益の残存率を20%としましたが、この残存する利益率は高ければよいというものではありません。

設備投資、試験研究費、採用費用等、未来のために投資を継続しなければ、会社は弱くなっていきます。

将来投資をせずに無理やり捻出した利益は、一過性です。

また、粗利率の高い業界は、競争が厳しいので、その分だけ、先行投資を強化しなければ生き残れません。

ですので、経常利益が限界利益額に比して大きすぎれば、必要な投資をしていないのではないかという疑念を引き起こします。

限界利益に対する経常利益の比率は、高すぎても低すぎてもいけないのです。

 

ちなみに、多くの会計事務所は、利益率が低く、ちょっと黒字が出ている決算書を好みます

税金の額も少なくなるので、お客から文句を言われないからです。

『今年も、税金が少なくなりましたね。』

と言って

お客から、

『ありがとうございます。』

と感謝されたいのです。

 

節税対策の結果、ちょい黒となった決算ならよいのですが、ほとんどの中小企業では、それが事業実態です。

 

利益がちょっと出ただけの決算書が事業実態であるとすれば、由々しき自体です。

現状維持のための投資すら、危うい状態なのです。

長期的な生存は、厳しいです。

本来であれば、会計事務所は、強力に経営者に注意喚起をして、利益改善を提案しなければなりません。

正直に、

『このままでは、事業はいつかだめになりますよ。もっと利益を出さなければダメです。』

と諫言しなければならないのです。

 

諫言は、不興を買う恐れがあるので、昔から、人気のある行動ではありません。

しかし、これは、会計事務所や経理担当者の義務でしょう。

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