創業融資を借りるとき、特殊な技術は、評価してもらえますか?

この記事の著者
代表者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

特殊な加工技術を持っています。
おそらくこの技術を持っているのは日本でも数人しかいません。
その技術での起業を考えているのですが、機械装置に2,000万円は必要です。
材料は無償支給を受けるので、資金負担はありません。
ただ、それだけのお金が手もとにないので、資金調達の方法を教えてください。
また、最低どれぐらいの自己資金を用意すればよいでしょうか。

創業には、機械設備だけでなく、そのほかのコストも必要となるので、創業資金総額は、多めにみておくべきでしょう。
材料の無償支給を受けることができるとはいえ、そのほかのコストがかからないわけではありません。
人件費、事務所家賃、販促費、そのほかを経費を考えると、2,300~2,500万円の資金が必要となるでしょう。
かりにここでは、2,400万円の資金が必要と仮定しましょう。

まず、日本政策金融公庫の経営力強化資金を利用する方法が考えられます。
この融資制度は、実質的な借入上限が2,000万円であり、かつ、無担保、無保証、低金利です。
借入限度は、実質的には、自己資金の倍までですので、自己資金は最低、創業資金総額の3分の1の800万円あることが望ましいです。

十分な自己資金が用意できないのであれば、複数の創業融資制度を利用するという方法を使うことも考えられます。
創業融資には、日本政策金融公庫のほかに、信用保証協会が自治体と組んで提供している制度融資があります。
この場合も、実質的な基準で、自己資金は創業資金総額の3分の1あることが望ましいとされています。
日本政策金融公庫と制度融資から半分づつを調達するとなると、自己資金480万円あれば、それぞれの制度から、自己資金の倍額の960万円を借りて合計 1,920万円を調達して、自己資金とあわせて合計2,400万円の資金を用意することができます。
ただ、この場合は、設備投資額を半分ぐらいに設定して、事業計画をつくって、それぞれの窓口に申し込むという方法をとる必要があります。
自己資金480万円で借りられる金額は、960万円が限度なので、投資額について減額修正が必要となるのです。
設備投資の見積もりを半額に抑えることが可能であるなら、この方法をとることもできます。

これも難しいということであれば、日本政策金融公庫と民間金融機関との協調融資を依頼する方法もあります。融資額を2行に分散させることにより、高額融資を実現する方法です。日本政策金融公庫に相談にいけば、対応してくれます。

なお、自己資金があれば、自動的に貸してくれるというわけではありません。
公的融資とはいえ厳しい審査はあります。
創業計画書で、次の諸点を強くアピールして、『貸しても大丈夫だ』と審査担当者に思わせるようにしてください。

  1. 特殊な技術について丁寧に説明する。とくに写真等のビジュアルな資料は重要です。技術を理解してもらうには、視覚的にアピールして、直感的に理解してもらうの近道です。
  2. その技術があなたしか持っていないことをアピールできる資料を用意してください。業界新聞の切り抜き等があれば、あなたの事業計画に強い説得力を与えることができます。
  3. 完成品を実際に納入している企業のリストを用意してください。顧客ごとの納入実績(売上)も概算でもよいので記載してください。そのリストの中で今後、取引をしてくれそうな会社があれば、それも明示してください。将来の顧客を確保しているというアピールは、創業融資の審査ではとても有利となります。

さらに、借入以外の資金調達の方法も検討されるべきです。
たとえば、取引先へ出資を要請してみたらいかがでしょうか。
加工技術が極めて特殊であるなら、取引先が供給元を独占的に確保したいと考えるかもしれません。
取引先からの出資も、この場合は、自己資本とカウントされるので、借入可能額を増やす効果があります。
なお、出資手続きは、相手先の財務部等の承認が必要なので、時間がかかる場合があります。
スケジュールを立てる際には、余裕をもって組んでください。

高額の創業融資にチャレンジされるのはリスクを伴います。
融資額が大きくなるにつれて審査は厳しくなるからです。

general

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