決算書から読み取れる経営情報

決算書は、単なる税務申告書の添付資料ではありません。

見方がわかっていれば、さまざまな経営情報を伝えてくれます。

社長の知りたい情報を教えてくれる、優れた経営コンサルタントなのです。

 

この記事では、社長さんたちからよくいただく質問と、それに対する試算表の読み方について解説します。

 

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の目的と違いといった、基本的な議論は別の記事で取り扱いますので、ここではより実践的な試算表の読み方をご紹介します。

 

①利益が出ているけどお金がない。どうしてなの?

 

利益が出れば、基本的には資金繰りは改善するはずです。

そうならないのは、別の原因があるからです。

試算表の見方がわかれば、簡単にその原因を知ることができます。

この答を知るためには、いつも見ている損益計算書だけでなく、貸借対照表に注目する必要があります。

次の貸借対照表の科目について増減を調べてみてください。

残高ではありません、期首残と期末残の差である、増減です。

 

  • 売掛金
  • 在庫
  • 買掛金
  • 借入金

売掛金が増加しているとすれば、未収の売上代金が増えたことを意味します。当然に、その分だけ、一時的に資金繰りが悪化します。

在庫勘定の増加は、その分だけ在庫の残高が増えたことを意味します。在庫の増加分だけ、資金は眠ってしまいますので、手持資金は減少します。

買掛金の減少は、買掛代金の支払が進行したことを意味します。その分だけお金が出ていきますので資金は減少します。

借入金の残高が減少していれば、返済額が新規借入額を上回っていますのでお金は減ります。

 

②お金をどれだけ借りられますか?

 

銀行からの借入可能額は、7割は決算書、残りは、非数字的な要素で決まると思ってください。

 

非数字的な要素とは、担保、会社の営業力、技術力、社長の経歴、会社の歴史、銀行との取引年数、経営の計画力などです。

 

運転資金なら、月商の3か月分、設備投資資金なら、『利益+減価償却費』の10年分が一つの目安です。

利益がプラスでないと設備資金の借入は難しくなります。

運転資金の借入の場合も、利益が出ていることが条件です。

 

日本政策金融公庫や制度融資などの公的融資制度を利用しても基本的な考え方は変わりません。

公的な融資でも、基本的には、回収可能性を検討する審査があり、借入限度額の考え方は変わりません。

 

③給料は高いか、安いか?

 

同業他社の一人当たりの情報と比較するのが、手っ取り早く、客観的です。

インターネットで調べてもなかなか出てこないので、顧問契約を結んでいる会計事務所に頼むのがよいでしょう。

当事務所でも提供しています。

 

給与総額が大きすぎるかどうかも分析しましょう。

給与総額が適正かどうかは、労働分配率により、判断してください。

だいたい6割が目安です。

これを超えると経営を圧迫します。

とくに7割になると、倒産危険ラインです。

売上に対して人が多すぎる状況です。

6割を割って、かつ、上述の会計事務所からもらった、一人当たりの人件費が低くなければ優良経営です。

 

ちなみに、労働分配率の計算は、次式です。

 

労働分配率=人件費÷粗利

※1 粗利は売上から原価を控除した利益です。

※2 人件費は、法定福利費、通勤費、福利厚生費など、人を雇うために必然的に要する費用も含みます。

 

④うちの収益力は良い方ですか。悪いですか?

 

これもよくいただく質問です。

 

同業他社とさまざまな観点から比較するべきでしょう。

 

最初に実施すべきは、売上の比較です。

売上の比較は、総額を比較しても意味はありません。

そもそも会社規模が違うからです。

売上は、一人あたり売上を同業他社と比べましょう。

この指標も会計事務所に頼めば出してくれるはずです。

 

さらに、さまざまな観点から比較して、経営の問題点を浮き彫りにしましょう。

 

  • 原価率、販管費率を比較する  自社のコスト体質をまず認識するべきです。
  • 損益分岐点の比較 この分析は、会社のコスト体質を明らかにしてくれます。同業他社よりも損益分岐点が高ければ、 高コスト体質です。
  • 自己資本比率 高いければ高いほど、財務力のある会社です。
  • 借入金対月商比 借入金の規模が適正かどうかを判断します。

さまざまな観点から同業他社と比較して、自社のコスト構造や財務の特徴がわかれば、ビジネスを変革するヒントをつかむことができます。

 

⑤どうすれば、利益がでるの?

 

売上を伸ばすのが一番です。

ただ、昨今は、簡単には売上は伸びません。

売上を伸ばすのが難しければ、コストをカットするしかありません。

コストカットは、付加価値に結びつかない活動のコストを削るのがコツです。

 

まず、勘定科目で考えるのではなく、コストを活動別にとらえる必要があります。

試算表は、人件費、販促費、広告費といった、勘定科目で表示されています。

勘定科目だけでは、実態はつかめないことが少なくありません。

大きな費用の科目については、その背景にある、活動を分析してください。

たとえば、人件費を例に挙げてみましょう。

人の活動はさまざまです。

管理、営業活動、製造、サービスなど、いろいろあります。

それぞれにどれだけの社員の労働時間が投入されているのかを推測してください。

売上につながらないどうでもよい活動に、予想以上に多くの時間、すなわち人件費が使われるているのはよくあることです。

それを発見できればしめたものです。

そこを効率化するか、より安いコストの方法で置き換えれば、利益を増すことができます。

 

⑥どこか、うちに問題ありますか?

 

漠然とした質問ですが、これもよく受ける質問です。

経営者は、漠とした不安から逃れられないものなのでしょう。

 

経営の問題点をいちはやく発見するためには、試算表の推移を分析するのが一番です。

経営の異常点は、かならず、試算表に現れます。

試算表上のさまざまな数値を、前年同月比と比べることにより、次のような経営情報を得ることができます。

 

  • 売上の推移 売上は、もちろん、前年に比べて増加していることが望ましいです。
  • 売上構成の変化 複数の商品、製品を扱ってる場合には、売上構成の変化を分析してください。利益性の低い商品が伸びていれば要注意です。
  • 粗利率の増加率 売上の増加率より低ければ、低額商品に売上がシフトしています。望ましいことはでありません。
  • 販管費の増加率 売上の増加率以上に増加している費目があれば要注意です。とくに人件費の増加率が、売上の増加率を超えないように注意してください。超えていれば、人はだぶついている恐れがあります。
  • 損益分岐点の変化 昨年より損益分岐点が上昇していれば、固定費が増加したか、利益率が下がっています。要注意です。
  • 現預金の残高の推移  要因分析をしてください。主な要因は、利益、在庫投資、売掛金・買掛金増減、設備投資、新規借入、借入返済です。何にお金が流れているのかをはっきりとさせて経営してください。
  • 役員貸付金の増減  役員貸付金の増加は、経営的、財務的に好ましいことではありません。経理手続き、支出内容を見直すべきです。

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