基本事項の決定

基本事項の決定

会社を作る一連の作業を行うひとを発起人といいます。発起人は、おおくの場合は、創業者、すなわち招来、社長になるかたがこの役割を担います。
この発起人が会社をつくるためには、まずは、会社の基本となることを決めなければなりません。
会社の名前、事業の目的、会社の住所、組織、役員構成、資本金の額、だれに株式をもたせるのか、事業年度などの会社の基本をデザインする必要があるのです。
いずれも、今後の経営の根幹となる事項です。最初でつまづくと、事業のおおきな足かせとなりかねません。じっくりと検討されることをお勧めします。
特に組織や資本構成は、いったん会社が走り出すと修正するのに大変な労力と手間を要することがあるので要注意です。役員にやめてもらうのは大変にストレスのかかる仕事ですし、株主構成を間違えると起業家自身が会社から追い出されかねません。
以下にその内容をご説明します。

商号

以前は、類似商号規制があり、同一市町村(区)内で同じ業種で類似の商号を使うことはできませんでした。この類似商号規制が廃止されたために、同一住所でなければ、同一商号の会社を設立できようになりました。
実際には、住所の同じビルにたまたま同じ商号の会社があるということは、ほとんどないので、自由に会社の名前を決められるということです。
だからといって、他社と同じ商号を勝手に使っても良いということではありません。他人が使用しているものと誤認のおそれのあるものを使用すると、不正競争防止法や会社法の規定にひっかる恐れがあります。他の会社と同じような商号を使用してしまうと、差し止め請求や損害賠償請求を受けることもありえるのです。
自信のないかたは、法務局で調査してください。費用はかかりません。

事業目的

事業の内容を決める必要があります。
将来的に実行する可能性のあるビジネスも含めて、書き出しましょう。後から追加すると手数料がかかるからです。
登記を受け付けてもらうためには、事業目的は、適法で、営利性があり、明確である必要があります。

  • 適法性⇒法律や公序良俗に反していないこと。たええば、『麻薬の密輸』は、事業目的にできません。
  • 営利性⇒利益を上げることのできる事業。『慈善事業への寄付行為』などは、ダメです。
  • 明確性⇒日本語として意味が通じること。例えば、『製造の企画共済』では、なにをいっているかわかりません。『広辞苑』『イミダス』『現代用語の基礎知識』を使って意味が通じるか確認しましょう。

事業目的の表現については、具体性などの要件が緩和されてきましたが、事前に法務局で確認してほうがいいでしょう。 
また、許認可が必要な事業の場合は、表現があいまいだと申請が受理されなかったりするおそれがあるので事前に申請する役所に確認しましょう。

本店所在地

本店の所在地とは、会社の本社の住所のことです。
賃貸住宅を本店とする場合には、公営住宅等は規制されておりますので、貸主の了解を取り付けておきましょう。
定款には、「千代田区」と本店所在地だけ記す方法と、「千代田区九段○丁目○番○号」というふうに番地まで明らかにして、本店所在場所を記す二つの方法があります。
それぞれに、メリットとデメリットがあります。前者の場合には、おなじ最小行政区画である特別区や市町村のなかで引越しするのであれば定款を変更しなくともよいというメリットがあります。ただ、本店の所在場所を決定する『発起人決定書』という書類を作成しなければなりません。
実際には、おなじ最小行政区画での引越しは珍しいので、本店の所在場所まで記す方法を当事務所ではお勧めしております。

事業年度

1年以内であれば、年に2回、3回の事業年度を設定することが可能ですが、決算作業が煩雑となるので、通常は、年一回とします。
営業年度の設定は、自由ですが、決算作業はなにかと煩雑な作業を伴いますので、営業年度終了月の翌月と翌々月と、会社の繁忙期は重ならないようにしましょう。

資本金額と株主

資本金額は1円でもかまいません。
ただ、対外的な信用を考えるとある程度の金額に設定されることをお勧めします。登記簿に記載される事項であり、金額が大きいほど、信用は高まります。
また、あまり、資本の金額が小さいと、初年度の決算が赤字で終わった場合に、債務超過状態に陥ってしまうおそれがあります。そうなると、外部からの信用の問題もありますし、金融機関からの評価(信用格付け)も厳しいものになるでしょう。
ですから、資本金額は、ある程度の額を準備したほうがよいと思います。

資本を増強するために、現物出資をする方法もあります。現物出資とは、金銭に代えて、ビジネスに使用する『もの』を出資する方法です。設備、器具、車両等の減価償却資産であれば、減価償却ができますので、節税対策にもなります。ただし追加的な設立手続が必要となります。現物出資する際には、その内容を 定款に記載しなければなりません。また、価額が500万を超えると検査役の調査もしくは、公認会計士、税理士、弁護士等の証明が必要となります。 さらに、登記申請の際には『調査報告書』『、『財産引継書』資本金の額の計上に関する証明書』を追加で添付しなければなりません。
現物出資により資本が増強されますのでその分だけ自己資本比率が改善され、金融機関等の評価は上がりますが、借入を申請する際の「自己資金」扱いにはなりません。長期的には、格付けの改善にはつながりますが、創業資金の借入の際に、自己資金がその分だけ増強されたとはみなされないということです。

次は、株主となるひとたちを決め、各人がどれだけ出資するのかを決めます。1株あたりの価格に出資する株数を乗じた金額が各株主の出資額です。
各株主の持分比率によって、だれが会社を支配するのかが決まりますので、注意してください。不用意に自分の持分が過半数に届かない資本政策を組んだりしてしまうと、意見の食い違いから、会社を追い出されることもあります。また、他人に3分の1以上の議決権を与えてしまうと、思ったように重要事項を決定できずに苦労する場合もあります。定款・株式・組織に関連する決議を単独で承認させたければ、議決権の3分の2以上を確保しておく必要があります。
資本政策の失敗は取り返しのつかない事態を招くことあります。いったん、発行した株式は、通常は、強制的に買い戻すことはできないので、資本政策の失敗は、修正することが大変に困難なのです。他人の資本を入れる場合には、熟慮の上、資本構成を考えてください。
たとえ、あなたが代表取締役になろうとも、会社の最終的な支配権は株主にあります。持分比率の維持には、十分に注意を払ってください。
招来、会社が成長した段階で、外部の投資家から出資をあおぐつもりなら、なおさら代表取締役の当初の持分比率は高めに設定しておく必要があります。出資を受ければ必然的に既存株主の持分比率は下がるからです。

株式譲渡制限

中小企業は、通常、株式譲渡制限をつけておきます。勝手に株式が譲渡され、好ましくない第三者が株主としての議決権を手に入れることを防ぐためです。投資家から投資を受けた場合でも、同じです。かれらが勝手の、未知の第三者に株式を売却することを防ぐ必要があるからです。
譲渡制限とは、定款に「当社の株式を譲渡により取得するには、取締役(会)の承認を受けなければならない」という記載を設けることにより、設定することができます。
譲渡制限をすると取締役の任期を最長10年に延長できますので、役員の変更登記の手間を軽減することができます。 

機関設計

取締役は一人でも、会社は設立できるようになりました。取締役が一人の場合は、その取締役が自動的に代表取締役になります。監査役も設置する必要もありません。
煩雑な意思決定過程を避け、スピーディに経営を行いかたは、 お勧めの機関設計です。
招来の成長を見据え、多様な人材を導入して経営を進めて行きたい方は、従来どおりの組織設計も可能です。取締役会を設置して、監査役が業務執行を監視するという仕組みです。この場合は、取締役は3人以上選任する必要があります。
オーソドックスな組織設計では、従業員を役員に昇格することによって、やる気を引き出すことも可能です。外部のブレーンを役員として活用することもできます。
それぞれ、独自の長所がありますので、自分の経営スタイルにあった機関設計をしてください。あなたの将来の経営ビジョンにあわせて自由に機関設計はすることができるのです。

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