リスケの成功条件

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

資金繰りがつまり、新規借入もできない場合には、支払いをストップしなければなりません。
支払いストップの順序は、銀行借入、税金、買掛金、人件費です。
まず、銀行借入の返済額を減額してもらいましょう。

銀行借入の返済額を減額してもらうことをリスケジュール(条件変更)といいます。
略してリスケと呼ばれています。
リスケを銀行に頼み込むことは、会社にとってとてもリスクのある行為です。
銀行が認めてくれなければ、銀行からの借入金は、不良債権扱いとなってしまいます。
不良債権扱いになったら、法的な措置をとられ、会社は潰されてしまうかもしれません。
誇張ではありません。
銀行は、不良債権の総額を開示しなければなりませんので、不良債権はどうしても減らしたいと考えています。
リスケが認められなければ、銀行が情をかけてくれる余地はありません。

リスケを銀行に認めてもらうには、コツがあります。
そのコツを理解していれば、リスケは、100%、認めてもらえます。
それは、経済的合理性です。
リスケをしたほうがしないよりも、経済的に合理的であることを納得させればよいのです。
法的措置をとって回収するよりも、時間的余裕を与えて、回収したほうが、回収総額が大きくなることを数値計画で示すのです。
いまは返せないが、時間的余裕を与えられれば、業績を回復させて、返せるようになることを経営改善計画で示すのです。

ただ、口頭でいくら説明しても、だめです。
リスケをするかしないかは、本部で決裁されますので、口頭で伝達した情報は伝わらずに、経済的合理性がないと判断される恐れがあります。
ですからリスケのときには、必ず経営改善計画といわれる事業計画を作る必要があります。

さらに、やってはならないのは、他人のせいにすることです。
経済環境や従業員のせいにして経営責任を認めようとしない経営者は、少なくありません。
これを、「他責」といいます。
他責の傾向が強い場合には、経営者が必要な経営改善を実施しないのではないかと疑われます。
時間的余裕を与えても、業績が回復しないなら、銀行借入金の返済額を減らす経済的合理性はありません。
銀行は、リスケを断る、『錦の御旗』を手に入れてしまうということです。
会社が傾くのは従業員の動機付けが低いのが一因です。その意味では、社員にも必ず、責任はあります。経営環境もよいはずがありません。しかし、リスケのときには、演技でも良いので、他責にはしないでください。

また、外部のコンサルタントにリスケの手続を代行してもらおうという経営者のかたもよく見かけます。
借金の返済を待ってくれと頼むのはいやなことです。
ましては、経営の非を認めて、頭を下げるのは、プライドの高い社長さんには、大変な苦痛です。
他人にリスケの交渉をしてもらいたくなる気持ちは、よくわかります。
しかし、他人任せにすると、やはり、経営改善計画の実現可能性を疑われてしまいます。
陣頭指揮をとって本気でやらなければ、リストラや人件費カットはできません。
実行力のない経営者にリスケを認めるのは経済的に合理的であるとは判断されません。
リスケを断られるリスクが生じてしまいます。

以上の失敗をしなければリスケは必ず成功します。
合理的な経営改善計画を作り、経営責任を認め、自ら交渉に臨めばリスケは、必ず、認めてもらえます。
謙虚にかつ緻密にリスケに臨み、会社を存続させてください。

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