市区町村の創業融資制度の欠陥

この記事の著者
代表者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

創業融資には、日本政策金融公庫の制度と、制度融資があります。
制度融資とは、自治体の支援のもとで信用保証協会が100%の保証人になってくれる創業融資のことです。
それぞれ、またいくつかの異なった制度が用意されています。

制度融資の場合は、都道府県と市区町村の創業融資があります。
都道府県と市区町村の創業融資を比べると、一見すると、市区町村の方が、利子補給や保証料補助が厚いので魅力的に見えます。
利子と保証料の負担を合わせても、約1%ぐらいに抑えられる創業融資もめずらしくはありません。

しかし、市区町村の制度融資には、3つの大きな短所があります。
第1に、市区町村の場合には、融資限度額は小さめに設定されています。
そのため、1,000万円近い高額融資になると成功確率がとても低くなります。
2番目の欠点は、融資実行までに時間がかかりすぎるということです。
市区町村の創業融資は、実行されるまでに3ヶ月以上は必要です。
制度融資は、もともと、銀行や信用金庫を窓口にしているために時間がかかります。
市区町村の創業融資の場合には、経営相談員が創業計画書の内容を、検証するので、さらに1~2ヶ月ほど、時間がかかってしまうのです。
経営相談員への面談は、最低でも数回は行われ、かつ、間隔を置いて実施されるので、短期にパスすることはできません。
この欠点は、致命的と言っても過言ではありません。
創業時の融資実行に時間がかかるということは、それだけ創業の時期が遅れるということです。
創業が遅れれば、それだけ売上を稼ぐチャンスを失います。
300万円の融資で、利子や保証料の負担が1%下がったからと言っても、3万円しか得はしません。
しかし、創業が2ヶ月遅れれば、失う売上は、その数十倍から数百倍になるはずです。
創業融資の場合には、実行が遅れることは、創業が遅れることと同じです。
創業が遅れれば、その分だけ、事業の開始がおくれ、売上を失います。
通常の融資と違って、創業時の資金調達の場合は、金利や保証料だけを重視していると、逆に損をしてしまうのです。
3番目の欠点は、時間がかかるにもかかわらず、創業融資の成功確率が、さほど高くなるわけではないということです。
経営相談員として指導するのは、ほとんどが中小企業診断士です。
中小企業診断士は、財務や資金繰り表はあまり得意ではありません。
一方、信用保証協会の審査は、損益計画や資金繰り計画の実現可能性を重点的に検証します。
2ヶ月以上、経営相談員の指導を受けても、創業融資を断られてしまうこともあります。
制度融資を利用するなら、東京都の創業融資のように、経営相談員への相談がなく、かつ、融資限度額が比較上大きい制度をご検討されることをお薦めします。

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