株式公開準備の進め方

以下に株式公開準備の進め方について時系列に沿ってご説明いたします。

1.株式公開準備チーム結成

①社内教育と組織の活性化

幹部を集めてセミナーを開き、株式公開に対する理解を高め、社内の意識を統一し、夢の共有化をはかります。

会社が本気で株式公開をして公的企業になることをアナウンスし、かつ、その夢を共有化することによって、社員の動機付けを強め、経営参加意識を高めることができます。

②株式公開プロジェクトの管理

株式公開準備作業は、下記にあげるように多種多様な作業を同時並行に、すばやく実行しなければなりません。株式公開作業は複合的なプロジェクトなので、工程管理表を作成して、精緻に進捗管理を実行しないと、株式公開にまでたどりつきません。
社長、管理部長、営業部長、製造部長、経営企画室長等の幹部がいつまでになにを実施する必要があるのかを明確にしなければなりません。

③経験者を株式公開準備室長、あるいは外部取締役として活用

証券会社や監査法人と折衝がうまくゆくかどうかが、株式公開の成否の分かれ目となります。

証券会社や監査法人の考えていることを熟知した人材が必要です。

株式公開の経験者を社員として雇うか、あるいはコンサルタントとして活用したほうがよいでしょう。

コンサルタントとして使う場合には、外部取締役にすれば、証券会社や監査法人との公的な折衝に当たることができますので、とても便利です。

2.資本政策の立案(株式公開を成功させる前提)

①資本政策の立案支援

株式公開を成功させるためには、綿密な資本政策が不可欠です。第三者割当増資、ベンチャーキャピタル投資、株式移動、ストックオプション、従業員持株会、株式分割等の手法を組み合わせて、資金調達、キャピタルゲインの確保、社員の福利厚生充実、経営の安定化、事業承継等々の諸目的を実現しなければなりません。

資本政策は定期的な見直しをかけ、修正する必要があります。でないと陳腐化してしまい、株式公開が実現できなくなってしまうことがあります。

②株式公開のための関係会社の整理

株式公開のためには、関係会社の整理・統合が必要となります。

まず、関係会社間の取引・金銭消費貸借・出資関係を洗い出します。
株式公開審査をパスすることができ、かつ、経営戦略に合致した、グループ再編案・組織案を設計する必要があります。

株式移動、増資、金庫株、合併、会社分割、株式交換、事業譲渡、清算、新株予約権等々の各種組織再編手法を組み合わせて整理統合を実行します。
関係会社の整理に失敗したために、株式公開に失敗する会社もありますので、早めの着手が大切です。

3.経営管理体制の構築(株式公開のための礎石)

①中期経営計画の策定・予算管理の導入

業界分析、SWOT分析を実施して、将来のIRにも耐えられうるだけの中期経営計画をまず策定します。

次にその中期経営計画をもとに、予算を作成します。株式公開を狙う企業が公開準備で一番苦労する作業が、実はこの予算(損益予算、人員計画、投資計画、貸借対照表予算、
資金収支予算)の策定と運用です。

予算と実績を月次ベースで対比してその原因を究明してマネジメントに報告する予実対比の管理体制も構築しなければなりません。

子会社がある場合には、さらに、連結月次決算、連結予算の作成、連結予実対比管理も必要となります。

②月次決算体制の構築

株式公開審査では、年度決算に準じた基準で月次決算が早期に実施されることが求められます。

上記の予算管理も導入しなければならないので、経理財務の負担はかなり重くなります。

IPOを目指すなら、経理財務の体制強化は、避けることができない投資です。

③組織の整備

組織の構造は、経営の根幹です。

IPO審査上も、組織は、有効な経営管理が可能で、かつ、会社の成長戦略に適合していなければなりません。さらに、株主・投資家を重視したコーポレートガバナンスが実現されていなければなりません。

組織に関する審査は、かなりうるさいと考えてください。

④規程の整備・運用

株式公開を実現するためには、会社の特性を反映した規程を策定し、実際に運用しなければなりません。

市販の規程集をちょっと手直ししただけでは、通用しません。

予算、経理、販売、生産といった業務規程から、多くの会社がつまづいている組織、職務分掌、職務権限、稟議に関する組織規程まで、会社の実態にあった規程が策定され、実際に運用されていなければなりません。

⑤内部監査の実施

内部監査体制が確立されていないと、株式公開はできません。内部監査は、未公開企業ではまず採用されていない仕組みなので、多くの会社が導入に戸惑います。株式公開審査においては、内部監査が実際に機能しているか、
厳しく問われるようになっています。

⑥日本版SOX法への対応

株式公開を目指す企業は、内部統制監査に対応しなければなりません。内部統制の構築に真剣に取り組まなければ株式公開は実現できません。財務報告に関する重要なリスクに対して十分なキーコントロールが運用されているか否かが重要なポイントとなります。中堅企業では経営資源が限られているので、効率的に内部統制を構築する必要があります。大企業のものまねをしていたら、膨大な費用がかかり、毎年数千万円の費用がかかってしまいます。そんなに費用をかけてしまったら、逆に株式公開が遠のいてしまいます。

重要な内部統制上のリスクへの対応を優先して文書化作業を実施することにより、効率的に内部統制の構築・評価・運用を行う必要があります。

4.開示書類の作成(株式公開企業は投資家に対して開示責任を負います)

①株式公開のための、ディスクロージャー資料の作成

株式公開の実質審査においては、会社が十分なディスクロージャー能力を有しているかは、
重要な審査ポイントとなります。決算短信、商法計算書類、四半期報告書、有価証券報告書をタイムリーに開示できる体制を構築しなければなりません。

株式公開を目指す場合には、経理財務への人材投資は、避けられない投資です。

②株式公開のための申請書類作成

株式公開のための申請書類は、とても複雑で作成に手間がかかります。また、申請書類は株式公開のときだけ提出を求められる書類です。ですから作成できる人材を社内で育てたり、採用したりしても公開後は使いみちがなくなってしまいます。例えば、経理事務フローチャートの作成は、高度なスキルが必要な作業ですが、公開したら2度と作成する必要はありません。作成作業の一部は、外部の専門家に任せたほうが時間的・費用的にはるかにお得です。

③監査法人の選定および指摘事項のフォロー

株式公開を実現するためには、社会的に信頼のある監査法人と契約するべきです。

また、同じ監査法人であっても、先生によって柔軟性やフットワークは全く異なることも念頭においておく必要があります。

社会的に信頼ができる監査法人の中から、株式公開準備会社に理解があり、公開実績が豊富な公認会計士を選ぶ必要があります。

例えば、トーマツだからといってすべての先生がIPOに長けているわけではないのです。

また、株式公開は、監査法人からの指摘事項をクリアーしなければ実現できません。監査法人の指摘事項は、業務フローをちょっと創意工夫するだけで解消することが多いのですが、会社が監査法人の指摘を大げさに解釈し、過度な対応をとり、
業務手続が硬直化し、逆に、株式公開に支障をきたすことがよくあります。監査法人の指摘事項は、最小の工数とコストで改善するように努力する必要があります。

5.株式公開審査

主幹事証券会社、証券取引所からの審査質問に対する回答作成は、コツがあるので、失敗を避けたければ、専門家を活用したほう無難でしょう。

6.株式公開実現へ

株式公開は、ひとつの通過点にすぎません。

多くのIPO企業が、公開後に衰退していきました。

わたしどもが支援したIPO企業の中にも上場廃止となった会社があります。

ゴールとは、考えないでください。

7.株式公開後

ディスクロージャー資料作成やIR活動を継続的に実施します。

誠意をもって信実を伝えることが最善の道です。

粉飾に走った会社は、長期的には必ず破綻しますので、真実を開示するように努めましょう。

【当事務所のサービス】

株式公開のための最短ルートへ、企業をナビゲートします。 批評家としてではなく、スタッフの一員として、株式公開準備作業を推進いたします。株式公開のあらゆる局面において、豊富な経験をいかし、
手足を動かし、汗をかいて、御社の株式公開を実現します。

実際に株式公開の経験のある会計事務所はとても僅少です。税務顧問業務と株式公開支援業務は、必要とされる経験や知識がまったく異なる作業だからです。

当事務所には、過去11社の株式公開を支援してきた実績があります。当事務所のノウハウを是非にご活用ください。

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