貸倒処理と貸倒引当金により節税する

法律上の貸倒

次の場合には、債権を貸し倒れにして損金に算入できます。

  • 民事再生法、会社更生法の規定により切り捨てられる金額
  • 債権者集会の決定により切り捨てられる金額
  • 債務者の債務超過の状態が、相当期間継続し、回収努力をしたが回収できないときにその債務者に対して書面により債務免除を明かにした場合

1、2番目は、判断は難しくありません。

切り捨てられた金額を貸し倒れ処理するだけです。

実務で判断に迷うのは3番目の場合でしょう。

この規定の「相当期間」は、よく3~5年と言われています。

ただし、国税庁の質疑応答事例によれば、相当期間とは、「債務者の経営状態をみて回収不能かどうかを判断するために必要な合理的な期間」と言っておりますので、経営状態がとても悪ければ、これより短い期間でも大丈夫です。

ただ、経営状態を判断にいたった証拠資料は、揃えておいてください。

また、債務超過の状態は時価で判断しますので、帳簿価額では債務超過でなくとも、含み損や架空資産があり、時価ベースで債務超過であればこの規定は適用できます。

債務免除をする「書面」は、内容証明郵便や公正証書でなくとも、合意書や確認書でもOKです。

税務調査においてバックデートで書面を作っただろうと言われたくなければ公証役場で確定日付をもらってください。

債務者が関係会社である場合には、判断の妥当性が問われます。

税務調査においては、相手が関係会社だったので甘い判断をしたのではないかと疑われます。

かりに、まだ回収できる金額があったのに、貸し倒れ処理をしたとみなされると、その部分は、寄付金となります。

寄付金は、一定額以上は、経費とならず、課税所得に加算されますのでご注意ください。

なお、法律上の貸し倒れは、決算において貸し倒れ処理をしなくとも、申告書上で所得金額を減算することができます。

損益計算書上の利益や、貸借対照表上の利益剰余金を減らしたくないときは、帳簿上は処理をせず、申告書上だけで減算処理をすればよいのです。

貸し倒れが多額となり、決算書を大きく傷つけてしまうときには、この方法で貸し倒れをするとよいでしょう。

事実上の貸倒

債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸し倒れとして損金経理することができます。

ただし、担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金経理はできません。

なお、保証債務は現実に履行した後でなければ貸し倒れの対象とすることはできません。

この貸し倒れ処理は、上述の貸し倒れと違って、帳簿上、貸し倒れ処理をすることが条件です。

したがって、損益計算書上の利益も、貸借対照表上の利益剰余金もその分だけ減ります。

形式上の貸倒

取引先との取引が停止してから、1年以上経過した場合には、売掛債権から1円の備忘価額を引いた、ほぼ全額を貸し倒れ処理することができます。

ただし、取引停止よりも最後の弁済の時の方が、遅い場合には、そこから1年以上を経過している必要があります。

弁済の時とは、回収予定日も含まれます。

回収予定日とは、取り決められていた支払日や、受取手形期日です。

そこから、1年以上を経過している必要があります。

また、継続的な取引の停止でなければなりません。

ですので、不動産取引のようなスポットの取引は含まれません。

ただ、国税庁の質疑応答事例によれば、通信販売ように、継続・反復して販売することを期待してその顧客情報を管理している場合には、1度しか取引がないケースでも、継続取引と扱うことができます。

なお、この規定は、担保物がある場合には、担保物を処理しないと適用できません。

不良債権に貸倒引当金を計上する

貸し倒れの要件を満たさないために、貸し倒れにすることができなくとも貸倒引当金を設定して、繰入額を経費に計上できる規定があります。

資本金が1億円以下の中小企業のほとんどは、この規定を利用できます。

貸倒引当金が計上できるのは、次の3つの場合です。

  1. 民事再生法による再生計画の認可や、会社更生法による更正計画の認可が決定された場合
  2. 相手先の債務超過の状況がおおむね1年以上続き、その事業に好転の見通しがない場合
  3. 手形の不渡りを2回出し、手形交換所の取引停止処分を受けたり、民事再生手続開始や会社更生手続開始などの申立てがされたりした場合

1番の場合には、その不良債権から、5年以内に弁済されることになっている金額と担保権の実行などにより回収できる金額を差し引いた金額が、貸倒引当金が設定できる額です。

2番の場合には、不良債権から担保権の実行などにより回収できる金額を差し引いた金額が、回収不能見込額、すなわち、貸倒引当金が設定できる額となります。

3番の場合には、不良債権から、相手からの債務などがあって相殺できる金額および担保権の実行などにより取立て等の見込みがある金額を差し引いた金額の50%が、貸倒引当金を設定できる額です。

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