創業計画書の書き方

金融機関の論理は単純です。

「返せる人には金を貸す」です。

 

返せるかどうかは、決算書で判断します。

ただ、創業したての企業は、決算書がないので、判断はできません。

ですでの、本来は貸すことはできません。

しかし、貸さなければ、日本の開業率はあがりません。

だから、日本政策金融公庫や、制度融資を支える信用保証協会は、創業者にも資金を貸してくれます。

公的な金融機関なので、国から予算がついているのです。

決算書がないので、計画書で判断して、なんとか救いあげようとしています。

決算書で判断したいが、決算書がないから仕方なく計画書で判断しているのです。

多くの創業者は、このことを知らずに、その計画書をいい加減に書いて失敗しています。

本来、貸せないが、開業率を上げるためになんとか計画書で好意的に解釈しようとしているわけですから、その計画書をいい加減にかけば、本来どおりの判断に戻るしかありません。

貸せないのです。

 

ただ、やみくもに強気の計画書を作ってアピールしようとしても、効果はありません。

アピールの仕方には、こつがあります。

例を挙げます。

「勤務時代にすごい強みを築いている。」

「計数感覚がつよい。」

「顧客を抑えている。」

「損益計画(収支計画)をすらすらと言える。」

「営業実績がある。」

「資金繰りもよく理解している。」

 

とくに計数感覚は大切です。

金融機関は、計数感覚のない社長がきらいです。

どんぶり勘定の社長が会社を潰すのをよくみているからです。

すらすらと損益計画や資金繰り計画を説明できれば、高く評価されます。

 

よく、自己資金があれば大丈夫と勘違いしている方がいます。

自己資金は、あっという間に運転資金や設備投資に消えます。

しかし、自己資金は、借入金の返済の担保にはなりません。

逆に自己資金が不足していても、事業を成功させた人は、借りたお金をきっちりと返してくれます。

開業して生き残れそうだと審査担当者に思わせるのがコツなのです。

自己資金は、判断要素に1つに過ぎません。

 

どうすれば、生き残れる創業者と思わせることができるのでしょうか?

以下に、最低限は理解しておいていただきたい、創業計画書の作成テクニックを具体的にご紹介します。

 

▼サイトで公表されている創業計画書の記入例をまねてもうまくゆかない  

日本政策金融公庫が創業計画書の記入例を紹介しておりますので、参考としてまずダウンロードしてご欄になってください。

創業計画書3.jpg

記入例をまねて書いたのに面談でコテンパンにやられて断られるということがあります。
創業計画書の記入例は、実は、あまりよい出来とはいいがたいしろものなのです。
記入例のような淡白な記述では、貸し付けたお金を確実に回収できるだろうかという担当者の疑念を払拭することはできません。
政府系金融機関とはいえ、元金と利息が回収できなければ担当者は責任を問われます。
担当者を十分に納得させ、安心感を与えるためには、より充実した内容の創業計画書を作成しなければなりません(創業計画書作成のコツ:記入例を信じないでください!) 。

創業計画書の本質は、事業計画書です。
このことを理解すれば、小さな紙面に事業計画を十分に書ききれないことはすぐに理解できます。
事業計画に説得力を持たせるためには創業計画書に資料を添付せざるを得ないことがわかってきます。
記入例にようにあっさりした表現でしかも添付資料がなければ、審査担当者を安心させることはできません。(創業計画書作成のコツ:添付資料を必ずつけてください!)。

 

▼いきなり創業計画書に記入してもだめ

いきなり創業計画書に記入するのはよくありません。

事業計画が思慮の浅いものとなり、パンチ力がとても弱くなってしまいます。

まずは、事業戦略の基本についてじっくり考えましょう。

遠回りなように見えますが、手を抜いて融資を断られるよりはましなはずです。

まずは、次の6つの経営課題について、仮説や前提をおいてかまいませんので、構想してみてください。各経営課題をいったりきたりしながら、基本的な全体コンセプトをまとめてゆきましょう。

  1. 市場のどの特定マーケットを攻めるのか。創業企業が市場全体をせめても勝てません。特定マーケットに集中する必要があります。
  2. そのマーケットには、どんな競合がいるのか。その競合に対してどんな差別化を図るのか。コスト競争力か付加価値のどちらかで差別化しなければ創業企業は生き残るのは困難です。
  3. 製品やサービスの内容を具体的にイメージする。営業手法から、製品・サービスのビジネスフローまでを具体的に設計する。
  4. 売上と経費はどれぐらいかかるか。毎月どれぐらい利益が出るか。売上を個別に積み上げ、経費を網羅的に予測して、利益を十分に確保できるかを検証する。
  5. 当初必要な資金を予測する。設備資金と、ビジネスが軌道に乗るまでの運転資金の合計が必要な資金である。その必要資金を自己資金で賄えるか否かを検討する。不足するなら、その不足額をどうやって調達するか。不足額は基本的には創業融資により借り入れるしかないが、借入以外に親からの贈与や、友人・知人からの出資などの可能性も検討する。
  6. 毎月の借金の返済額はどれぐらいになるか。返済可能な利益を確保できるか。

基本的な考えがきっちりと整理されていないと創業計画書の整合性がとれなくなり、「貸したら危ない」と思われてしまいます。逆に上記の基本コンセプトがしっかりしていれば創業計画書のできがよくなり、借入できる額を増やすことができるだけでなく、事業戦略が整理され、ビジネスで成功する確率が高まります。(創業計画書作成のコツ:まずは筆を置いてください!)。

基本的なコンセプトが決まったら、創業計画書の作成に着手しましょう。

まずは、創業計画書のフォーマットをダウンロードしてください。

政策金融公庫3.jpg

信用保証協会3.jpg

単純なフォーマットですが、この創業計画書のフォーマットになにを書くかで、新規開業者にとっては、信じられないような好条件の融資、すなわち創業融資が受けられるか否かが決まります。 

以下が、創業計画書の具体的な書き方のポイントです。

 

▼創業の目的・動機の書き方

まず、最初の『創業する目的、動機』ですが、二つのポイントを必ず守ってください。

@ まずは、狙っている顧客ターゲットを絞ってください。

創業企業が市場全体に対して漠然と製品やサービスを売っても経営資源に限りがあるので、生き残りは困難です。 

特定の市場に戦力を集中する必要があります。 

まず、ターゲットを絞ってください。 

審査担当者に、ターゲットを絞っている起業家を好みます。 

さらに、そのターゲット市場が伸びていることをアピールできればとても有利です。 

添付資料をつかってその特定市場が拡大していることを示してください。 

市場の規模・成長性という記入項目は見当たらないですがあえて書くことが必要です。 

国の白書とか、各種の調査会社の資料でピンポイントのものがあれば使って下さい。飲食店やサービス・IT系のビジネスだと、該当地区や当該ビジネスの統計資料は探してもないことが多いので、その場合は、自分の足で通行量とか顧客層について実地調査して報告書にまとめください。フォーマットはなんでもかまいません。文章もへたでもかまいません。箇条書きでも結構です。審査する側はあなたの文章力を判断しようとしているわけではありません。審査担当者は、あなたが、伸びている特定市場でビジネスを開始しようとしていること、それがゆえに失敗する確率が低いこと、貸したお金が戻ってくる可能性が高いことを知りたいのです。 

断られる人の方が多い融資制度です。積極的なアピールが重要です。ターゲットを絞っており、かつそのターゲットが伸びていることを示すことはとても大切なのです(創業計画書作成のコツ:市場調査をお忘れなく!)。  

A そのビジネスにかける思いや夢、使命感を熱く語ること。

高尚な使命感をどんなに熱く語っても審査担当者は、百戦錬磨ですので、真に受けません。

しかし、少なくともあなたのことをまじめなやつだとは思ってくれます。

まじめな人と思わせることは、融資審査では意外に重要です。

だれでもビジネスとやりがいとを両立させたいと思っているはずです。その良心の部分を、照れることなく、まるで他人をほめるように書き綴ってください。イタリアンレストランを経営したいなら、『イタリアンの文化が好きで、日本人にもっとイタリアのよさを味わってもらいたい』とか、思いの部分を堂々と語ってください。

融資を受けるためには、融資担当者に、あなたが現実的な思考ができる人であることを理解してもらうほうが、夢を語るよりもはるかに重要であります。しかし、これから創業するビジネスに夢や強い動機付けをもっている人の方が、ビジネスに成功する確率が高い、すなわち、貸したお金をちゃんと返済できる可能性が高いことも確かなのです。夢や理念がおざなりに語られていれば、あなたの動機付けを疑われ、減点評価されます(創業計画書作成のコツ:使命感を軽視しないで下さい!)。


▼事業の経験の書き方

次に『事業の経験』ですが、経験の乏しいかたは、あっさりと「ありません」と書かれてしまうことがあるのですが、それは融資はいりませんと言うのに等しい行為です。経験の内容と勤続年数については、審査担当者はとても重要視しているからです。

ばか正直であれば評価されると考えるのは誤りです。 直接的な経験がなくとも、間接的な経験はあるはずです。

ラーメン屋を経験がないのに開業するとしましょう。正社員として経験がなくとも、アルバイトをしていたことがあるとか、サラリーマンのときに顧客がラーメン屋でいろいろ経営改善のアドバイスをしたとか、関連する経験を記述してアピールするべきです。 自己の経験のなかでスタートするビジネスにつながる経験がなにかあるはずです。それを引き立てて記述するようにしてください。

経験した業種が異なっていても、営業・マーケティング・商品開発・人事管理、利益管理などのスキルは、異なる業種でも使えますので、必ずアピールしてください(創業計画書作成のコツ:事業経験の記述を諦めないこと)。

開業するビジネスで十分な経験があるかたは、自分の経歴を積極的に記述してください。まるで尊敬する人物を誉めそやすように書いてください。注意していただきたいのは、経験がおありになる方ほど、自信があるせいか逆にあっさりと記述してしまうことがありますが、手短にそっけなく履歴を書き並べるのは禁物です。能力、経験、各役職のときの業績を大いにアピールしてください。とくに上位成績や表彰は、忘れずに記述してください。

事業経験と、これから創業する事業の差別化要因の関連付けも忘れないでください。「こういった経験があるから、ライバルに差をつけることができる」という論法です。(創業計画書作成のコツ:事業経験をあっさり書かないでください!)。

面談のとき、口で言えばいいと考えて要点だけを書くのはだめです。面談で大きく減点することはあっても大きく得点することはないからです(創業計画書作成のコツ:口頭では伝わりません!)。


▼お取扱いの商品・サービス(取扱品・主製品またはサービス)の書き方

審査担当者は、理解できない事業にはお金は貸しません。 

ですから、商品・サービスの分類・概説を記載するだけでなく、実物や写真を見せたり、図やチャートを創業計画書に添付したりして、取り扱っている商品・サービスを具体的かつ明瞭に説明してください。ここでのポイントはわかりやすさです。友人や家族に見せて、その商品やサービスの説明が分かりやすいかどうか確認してください。 

特に、一般消費者向けでないビジネスやIT系のビジネスの場合は、融資担当者があなたの商品・サービスをよく理解できなくて評価が大幅に下げられるということがよくあります。 融資担当者があらゆる業界の基本がわかっていると考えるのは大きな勘違いです(創業計画書作成のコツ:銀行はビジネスのことはわかりません!)。

次に審査担当者は、営業力のある創業者が好きです。 

ですから、具体的な販売手法についても記述してください。売れなければ企業は生き残れません。売るための具体的な手法を記述してください。DM、ちらし、広告、インターネット広告、イベント、紹介営業、テレアポ等の販売手法の詳細について説明してください。視覚的に販売手法を示せる資料があれば、ぜひに創業計画書に添付してください。不特定多数の顧客へアタックする具体的な方法があることを創業計画書上でアピールすることはとても大切です(創業計画書作成のコツ:販売ノウハウをアピールしよう!)。


▼セールスポイント(強みやセールスポイント)の書き方

『セールスポイント』もつまづかれる方が多いところです。いわゆる差別化要因を書かなければゆけない場所ですが、この差別化要因をがんばってアピールしようとしてちぐはぐな表現になってしまう方が結構います。差別化といわれてもどうしてもぴんとこない人は、無理をせずに、そのビジネスにおいて絶対にクリアしなければならないビジネスルール、守らなければならない基本を確認するといった程度の姿勢で書かれたほうがよいでしょう。

たとえば、運送業のセールスポイントなら

  • 時間を厳守
  • 礼儀正しく
  • 安全運転
  • 運送物や建物を傷つけない

となるでしょう。

そのビジネスの基本は何だろうと問いかけるだけで、逆に、差別化要因を明確に意識することができるのです(創業計画書作成のコツ:せめて基本を書いて下さい!)。

ただ、できれば、顧客を絞った上で、パンチのある差別化戦略を構築してください。その方が、担当者の印象は格段によくなります。

競争相手に打ち勝つためには、ターゲットを絞り、そのターゲットが望む付加価値を提供しなければなりません。価格も競争的である必要があります。

競合他社よりも高付加価値である上に、もっと安い。それにもかかわらず利益は確保できると主張できれば、審査は、とても有利になります(創業計画書作成のコツ:差別化しなければどっちみち生き残れません!)。

差別化要因を考えるときにさらに注意しなければならないのは、その差別化要因が、顧客の視点に立っており、かつ持続可能であるということです。顧客のニーズを忘れてひとりよがりな付加価値を空想したり、あるいは、すぐに競合にまねされ追いつかれてしまう差別化要因を想定しても、意味はないのです(創業計画書作成のコツ:ひとりよがりな差別化は禁物です!)。


▼取引先・取引条件等(販売先・仕入先)の書き方

次に、「ご予定の販売先・仕入先」の記入方法です。

販売先については、これから営業をかける潜在顧客でもよいので、列挙してください。 空白は絶対にだめです。

販売先から、発注書とか契約書とか入手できるのであれば、それを創業計画書に添付すれば、強力なアピールになります(創業計画書作成のコツ:顧客リストで点を稼いで下さい!)。

もし飲食業などで、顧客が不特定多数であるなら、顧客の名前をいちいちあげることはできません。その場合には、どんな属性のお客さまをターゲットにしているのかを書いて、上述した統計資料や実地調査資料を創業計画書に添付してください。その顧客層のニーズが拡大していることをしつこくアピールするのです。この融資制度は成功する人より失敗する人のほうが多いので執拗さが大切です(創業計画書作成のコツ:市場調査をお忘れなく!)。


▼必要な資金と調達の方法(創業時の投資計画とその調達方法や内容)

資金計画を記述する場所です。

資金の調達方法と、使途を書きます。右側が調達方法で、左側が使途(投資計画)です。

さらに、調達方法は、自己資金と借入に分かれます。借入はこの場合は、創業融資による借入となります。

使途は、設備資金(店舗・工場など)と運転資金(商品代金・経費など)に分かれます。

自己資金、設備資金と運転資金の意味は、下記で説明します。よく理解してください。各資金の概念を理解しておかないと面談でちぐはぐな説明しかできずに減点されてしまいます(創業計画書ルール1)。

左右の金額の合計は当然のことながら一致しなければなりません。右側の調達額が大きければ、お金があまるだろうと判断されて借入予定額が減額されるし、左側の使途が大きければ、資金的な手当てがつかない現実性のない創業計画を立てていると判断されてしまいます(創業計画書ルール2)。

  • 自己資金とは、返済不要な自分のお金のことです。会社なら資本金と資本剰余金に該当します。保証金の支払いなどに一部をつかってしまっていても、減額する必要はありません。親や親類から自己資金を支援してもらっている場合には、贈与を受けていることを示す書面(贈与契約書)を用意する必要があります。贈与であることが明らかでないと、借入扱いとなり、融資金額を減額される恐れがあります。自己資金が不足していても、創業計画書の内容がとてもしっかりとしているために、十分な創業資金の融資に成功された経営者はたくさんおられますし、みなし自己資金、贈与、事業関連者からの出資、現物出資等の手法により、自己資金扱いとしてもらう資金を膨らませることもできます。
  • 設備資金(店舗・工場など)は、建物、器具、車両、機械、ソフトウェア等への投資です。賃貸物件の保証金もここに入ります。設備資金については、裏づけとなる見積書、領収書を見せてほしいといわれるので、きちっと整理しておきましょう。
  • 運転資金(商品代金、経費など)には、開業費用(賃貸物件の礼金、仲介手数料、求人費用、ちらし、ホームページ作成費用等)と、ビジネスが軌道にのるまでのつなぎ資金があります。つなぎ資金は、創業の見通し(収支計画1年目)の経費総額の2〜3か月分が必要とされます。想定した売上入金がはいるようになるまでの期間を乗り切るための資金です。つなぎ資金は、経費総額と整合性がないと借入申し込み額を減額されてしまうこともありますの注意してください。
  • 設備資金と運転資金の合計から、自己資金を引いた金額が借入をしなければならない金額、すなわち、創業融資制度に対する融資申込み額です(創業計画書ルール3)。


▼事業の見通し(収支計画)の書き方

この部分が、創業計画書のなかでも、融資担当者がもっとも重視する箇所です。この出来不出来で、融資申込者の経営能力が判断されてしまうといっても過言ではありません。この部分が根拠だてて記載され、起業家が実感を込めて説明できるかいなかで、担当者は、借入申込者の返済能力を判断するのです。理由は簡単です。利益の一部が借入金の返済に充てられるので、十分な利益を確保できそうもない計画を立てる経営者は、借金を返済できないとみなされるからです。ですから、創業当初(1年目)から、借入返済をしてもやっていける計画となっていなければなりません(創業計画書ルール4)。

資金繰り計画は必ず添付してください。審査担当者は、資金使途と返済財源の二つのポイントから可否を検討します。ともに、資金繰り表が添付されていると強くアピールできます。とくに、創業者が、資金繰り計画の内容についてよどみなく答えることができれば、強力にアピールすることができます。審査担当者は、計数感覚の強い経営者が大好きなのです(創業計画書ルール5)。

以下、具体的に解説します。

 

@売上高

算出根拠を具体的に数値を入れ込んで説明するのがこつです。 要は、売上を作り出す基本的要因から売上目標を立てるのです。業種ごとの売上高の目標の設定の仕方を以下に挙げます。この数式を右側の根拠の欄に記入してください。要は、売上目標が、いい加減な目見当ではなく、売り場面積とか席数から客観的に算出しているということを示す必要があるのです(創業計画書ルール6)。

売場面積、席数、生産能力は設備投資額と矛盾がないか必ず見当してください(創業計画書ルール7)。

営業人員は、人件費と矛盾がないように計画してください。売上と人件費に整合性がないと計画そのものの信頼性が失われてしまいます(創業計画書ルール8)。

売上単価は、業界特性だけでなく経営者の戦術・ねらっている顧客の消費・購買パターンの影響を受けます。自分の戦略にあった売上単価や売上数を記載しないと現実味のない創業計画書になってしまうので要注意です(創業計画書ルール9)。

  • 小売業       (坪当り売上高)×(店舗面積)=(売上高)
  • レストラン    (客単価)×(席数)×(回転数)=(売上高)
  • 商社          (営業マンひとりあたりの売上)×(営業人員)=(売上高)
  • 製造業       (主要な設備の生産能力)×(設備の台数)=(売上高)

業種ごとの売上データについては、以下のHPをご参考にしてください。

・ 中小企業庁HP公開情報調査統計
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/index.html


≪必要な売上高の算定方法(創業計画書ルール10)≫

売上はどれぐらい必要でしょうか。少し複雑ですが、最低限必要な売上高は次式で算定できます。

 

事業承継図形8.gif

 

たとえば、次のような会社を想定しましょう。

【設問】

・人件費・地代等の経費合計額が、金利を含めて月に100万円発生する。

・借入額が700万円。返済期間7年。月次返済額8.3万円。

・商品原価率8割。

【答え】

必要最低売上高=(100万+8.3万×1.7倍)÷(1−80%)=570万円

 

なお、この金額はあくまで収支とんとんとするための最低売上高です。成長資金が必要ですから、売上はこの金額以上である必要があります。

また、正確には、非現金支出費用(減価償却費、引当金繰入額等)、運転資金増加額、設備投資額を考慮しなければなりませが、創業計画書ではほとんどの場合は、そこまで考慮する必要はありません。 

 

A売上原価

売上原価とは、売上をあげるために直接的に要したコストです。小売や商社なら商品原価、飲食店なら材料費と料理人の人件費、製造業なら製造原価(材料費、製造人件費、製造経費)です。上記の中小企業庁から出ている統計資料や、よく本屋で売られている開業案内本にその業種における平均的な売上原価率が例示されていますので、それを参考に計上してください(創業計画書ルール11)。

算定根拠は、右側の根拠欄に必ず記載してください。調べても該当する業界を見つけられなければ、類似業界から推測することになります。あまりとっぴな原価率は変だなと思われるので参考資料を調べてから原価率を決めてください(創業計画書ルール12)。

 

B経費(人件費、地代家賃、光熱費、減価償却費、その他経費)

とくに重要なのが人件費です。売上を実現するための人員は最低、何人必要なのかを考えて計上する必要があります。売上と人件費(人員計画)とがバランスしていないと、担当者は、あなたのことを現実的にビジネスを計画できないひとだと判断するおそれがあります(創業計画書ルール13)。 

売上を維持するために正社員とアルバイトが何人必要なのかを考え、その必要人員から人件費を算出する必要があります。この算出式は、必ず、右側の根拠欄に記載してください。

人員に人件費単価を乗じて月の人件費総額を算出します。

  • 正社員: 人員×月額給与
  • アルバイト: 人員×時給×1日当たりの労働時間×月あたりの労働日数

家賃(地代家賃)については、借りる予定の物件の賃料を計上します(創業計画書ルール14)。 

そのほかの水道光熱費、旅費交通費、消耗品費、通信費等の経費は、上記の中小企業庁から出ている統計資料や、開業本にそれぞれの業界における売上高比率が掲載されていますのでそれを参考にしてください。これらの経費の水準が、業界平均の売上高比率と乖離しすぎていると、やはり、現実的な計画力があるのか疑われることになりますので適正な額を計上してください(創業計画書ルール15)。

減価償却費は、固定資産の取得原価を各年度に振り分けて費用化する会計処理です(創業計画書ルール16)。 

 

C経費の支払利息

借入希望額に、規定の金利を乗じた金額を12ヶ月で割って1ヵ月の金利を出してください。 たとえば、800万円を金利3.6%で借りるのであれば、利息は月額24,000円となります。正確には返済による元本の減少も考慮する必要がありますが、右側の根拠欄に算出式を書いておけば、そこまで正確に計算する必要はありません(創業計画書ルール17)。

支払利息の支払や元本の返済は銀行が気にするところなので、正確に計算して損益計画に入れ込んでください(創業計画書ルール18)。

 

D利益

売上から、売上原価と経費合計を控除した残高が利益です。この利益から税金が払われ、借金が返済されます。ですから、この利益額は、毎月の借入返済額より、税金支払分だけ大きくなくてはなりません(70%で除した金額になれば十分でしょう)。800万円を『毎月返済額10万円×80回』という条件で借りたなら、毎月の目標利益は15万くらいなくてはだめです。約30%ぐらいは税金の支払いに消えるので、10万円の返済をするためには、余計に利益が必要なのです。創業融資制度でも、お金を返済してもらえる創業計画にしかお金は貸してくれません。「利益>税金+借入返済額」となっていないとお金は貸してもらえないのです。税金の記入欄はありませんが、これは守らなければならない記入鉄則です(創業計画書ルール19)。 

※返済原資は正確には、「税引き後利益+非現金支出費用(減価償却費、引当金繰入額等)−運転資金増加額−設備投資額」ですが、創業計画書ではほとんどの場合は、そこまで考慮する必要はありません。

 

▼資金繰り計画

利益が出ていても、倒産する会社はあります。

黒字倒産です。

在庫投資、設備投資、借入返済などのための支払は、直接には経費とはならないので利益は減らしませんが、資金繰りを圧迫して会社を倒産させてしまうことがあります。

ですから、資金繰り管理は、とても重要です。

審査担当者も、会社の資金繰りを予測して、貸した金を返してもらえるかを判断しています。

ですので、損益計画とは別に資金繰り計画を作って、きっちりと返せることをアピールする必要があります。

また、審査担当者は、資金繰りの管理に関心を示さない経営者が大きらいです。

会社を潰す社長は、資金繰りに弱い人が多いからです。

いやな思いをさんざんにしてきています。

資金繰りの管理がきちっとできる経営者と思わせることができれば、審査担当者の評価は、ぐっと上がります。

資金繰り計画は、創業計画書においては、必須添付資料と考えてください。

次の実例をご参照ください。

⇒資金繰り計画書の実例


▼儲かるコツがわかる

創業計画書を、月次決算と比較することによって、自分の考えや戦略の誤り・欠点を発見し、貴重な教訓を学ぶことができます。生き残る経営、儲かる経営を実現するためには、大変に有効な経営管理プロセスです。融資が終わったら、創業計画書を捨ててしまうのではなくて、実際の経営実績と見比べて自分の考えの誤っていたところ、是正しなければならない点を発見しましょう(創業計画書ルール21)。

計画のどおりにいかなくとも追加融資は、多くの場合、必要となります。このときに、その計画未達成の原因と今後の対策を的確に説明できれば、追加融資は格段に調達しやすくなります。


▼創業融資の成功確率

日本政策金融公庫や、信用保証協会を利用した制度融資を引き出すことに成功する確率はどれぐらいでしょうか?

正確な統計はありませんが、銀行員や専門家の間では、大体、申込者の30%ぐらいといわれています。また、融資額が、申し込み額から減額されることも少なくありません。

ただし、上記の内容を熟読されて創業計画書を丁寧に作りこまれれば、成功確率は飛躍的に高くなるはずです。

当事務所では、元銀行員が懇切に融資指導をしていることもありますが、年間100社超の創業融資を成功させています。

創業計画書を丁寧に練り上げれば、必ず、よい結果を得られます。

当事務所には、創業融資の調達に成功した、多くの創業計画書の事例が蓄積されています。創業計画書の書き方でわからないことがあれば、ぜひ、当事務所の無料相談をお受けください。


▼創業融資の基礎知識

  1. ⇒創業資金の集め方 さまざまな創業資金の集め方をご紹介します。
  2. ⇒日本政策金融公庫とは? 創業者にも貸してくれる公的金融機関
  3. ⇒信用保証協会と制度融資 信用保証協会の基本を理解しましょう
  4. ⇒『新創業融資制度』について 無担保、無保証の創業融資制度です。
  5. ⇒『中小企業経営力強化資金』について 無担保、無保証、要件上は自己資金不要、しかも融資額は最大2,000万円です。
  6. ⇒『新規開業資金』について 借りやすい創業融資制度です。
  7. ⇒東京都と市区町村の創業融資 ともに信用保証協会と自治体がバックアップする創業融資制度です。
  8. ⇒市区町村の創業融資の重大な欠陥
  9. ⇒創業融資の比較 選んではいけない創業融資制度とは?
  10. ⇒日本政策金融公庫と制度融資は、どちらが得か? 総合的には日本政策金融公庫です。
  11. ⇒創業融資の成功条件 創業融資に失敗しない秘訣を説明します。
  12. ⇒自己資金について 自己資金は融資審査ではとても重視されます。
  13. ⇒自己資金が不足しているとき
  14. ⇒創業計画書の業種経験の書き方 経歴アピールで成否が決まる。
  15. ⇒創業計画書の書き方 創業計画書の書き方で成否は決まります。
  16. ⇒創業計画書の記入例 日本政策金融公庫が提供する記入例です。
  17. ⇒資金繰り表の重要性 資金繰り表をすらすらと説明できれば、融資審査ではとても強くアピールできます。
  18. ⇒創業計画書と資金繰り計画書で創業融資は決まる
  19. ⇒創業融資の面談で守るべきこと 面談で犯しがちな失敗とは?
  20. ⇒創業融資の流れと必要書類 創業融資を借りる手順です。
  21. ⇒創業融資で新事業を立ち上げる 起業だけでなく新事業立ち上げにも使えます。
  22. ⇒創業融資の成功事例 自己資金不足、経験不足、事故暦、事業譲渡、高額融資の事例を集めました。
  23. ⇒創業計画書と事業計画書の違い 創業計画書は創業者用の事業計画書ですが、ちょっと特徴があります。
  24. ⇒創業後に赤字を回避するための具体的な経営手法
  25. 創業融資Q&A よくある質問にお答えします。

 

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