遺留分とは、一定の相続人が最低限、相続できる財産です。遺言によっても侵すことのできない民法に規定された権利です。
具体的な割合は以下のようになります。
- 配偶者か子供のどちらかがいる場合: 相続財産の2分の1
- 父母だけの場合: 相続財産の3分の1
- 兄弟姉妹: 遺留分はありません。
この遺留分に法定相続分をかけて、それぞれの相続人に与えられる割合を計算します。
たとえば、夫がなくなり、妻一人と、子供二人が残されたとします。
仮に、夫が残した遺言書が、『長男にすべての財産を相続させる』と書かれていたとします。遺産総額を1,200万円としましょう。
この場合、妻ともう一人の子供は、遺留分減殺請求を行使して、次の遺留分を請求することができます。
- 妻の遺留分=基礎財産1,200万円×遺留分(2分の1)×法定相続分(2分の1)=300万円
- 子供の遺留分=基礎財産1,200万円×遺留分(2分の1)×法定相続分(4分の1)=150万円
遺留分減殺請求は、必ず行使しなければならない権利ではありません。ほかの相続人が納得すれば、個人の意思は尊重されます。
また、贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内か、あるいは、相続の開始から10年以内に行使しなければ権利はなくなります。
中小企業のオーナーの財産の大半は、自社株です。
自社株のすべてを後継者に承継させれば、多くの場合は、他の家族の遺留分は侵害されてしまいます。ほかの家族が遺留分減殺請求権を行使すれば、後継者は対抗することができません。
かといって、後継者が50%超の自社株を承継できないと、経営はとてもやりづらいものとなります。最悪の場合は、会社から追い出されてしまいます。
たとえ、50%超を承継したとしても、株式が親族に分散してしまうと、株主代表訴訟等のリスクを恐れ、経営が大きく制約されてしまう恐れがあります。
環境の変化に合わせて柔軟かつ大胆に意思決定ができない会社が生存し続けられるほど、いまの日本の経済状況は甘くありません。
後継者以外の相続人に分割用の資産を用意しなければ、ほかの相続人が遺留分減殺請求権を行使して、相続が『争族』へ発展する可能性が高まります。
会社分割により会社を分けたり、あるいは、後継者以外の相続人への分割用資産を、保険や資産組み換えによってつくっておいたりする必要があります。
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