創業をするひとの大きな悩みの1つは、資金調達です。

必要な資金を調達できないと、事業を軌道に乗せられません。

不足部分は、出資を受けるか、借りるしかありません。

多くの場合は、借入に頼ることになります。

 

次に心配なのが、事業に失敗したら借金だけが残ってしまうのではないかという不安です。

会社で借入をしても、通常、経営者保証を求められるので、経営者は、責任を取らされます。

創業者の8割がこの不安を抱えています。

 

創業者が、低利で資金調達する方法は、主に、日本政策金融公庫と、保証協会の保証と自治体のバックアップにより、信金や銀行などから借りる制度融資の二つです。

 

日本政策金融公庫の場合は、経営者保証なしで創業者にお金を貸してくれる『新創業融資制度』を利用することができます。

ただ、制度融資の場合は、創業者は、経営者保証をしなければなりませんでした。

会社が返せなくなった場合には、経営者は責任を取らなければならなかったのです。

 

しかし、制度融資の場合も、経営者保証を不要とする保証制度が創設されました。

スタートアップ創出促進保証という制度です。

 

この保証制度では、創業時の借入金に対して個人的に責任を負うリスクは、ありません。

会社がつぶれても、経営者は、借入金を返済する義務を負わないのです。

創業者にとっては、朗報です。

 

この保証制度の主な概要は、以下の通りです。

 

保証対象者 主に、創業予定者や創業後5年未満の法人です。

 

利用限度額 3,500万円。

 

保証期間 10年です。

 

金利 金融機関所定

 

保証料 各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率

 

据置期間 1年(一定の条件を満たすものは、3年以内)

 

保証人 不要です。

 

創業計画書の提出は、必要です。

 

自己資金 税務申告の一期目が終了していない創業者の場合は、10分の1以上の自己資金が求められます。

 

また、3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受ける必要があります。

創業融資制度には、2種類あります

日本政策金融公庫が提供している創業者向けの融資制度と、自治体と保証協会が協力して提供している制度融資です。

日本政策金融公庫とは、創業支援や中小企業の事業支援を重点的に行っている政府全額出資の金融機関です。

制度融資とは、信用保証協会が創業者のために保証人になってくれるうえに、自治体があっせんや、金利・保証料の補助をしてくれる創業融資制度です。

融資制度としては、無保証融資があるので日本政策金融公庫の創業融資の方がお勧めですが、融資審査は、断られるリスクがあるので、保険として、制度融資も同時に申し込まれることを助言することもあります。

種類の制度融資

さらに、制度融資にも二つの種類があります。

東京を例にとれば、東京都が提供している制度融資と、市区町村が提供している制度融資があります。

日本政策金融公庫と制度融資との比較は、別の記事で説明しますので、ここでは、制度融資の二つについて比較検討いたします。

渋谷区で創業する場合を例にとって両者の概要を比較してみましょう。

【制度融資の比較】

項目 東京都の創業融資 渋谷区の創業融資
融資金額

対象者の分類に応じて

①創業前なら『自己資金+2,000万円』

②創業後5年未満なら3,500万円

③分社化 3,500万円

1,250万円。

ただし、建設業・運輸業を除いて、営業車両は、400万円まで。

対象

次のいずれかに該当するもの

①事業を営んでいない個人で、創業しようとするもの

②事業を営んでいない個人で、自己資金があり、創業しようとするもの

③創業(設立)した日から5年未満の中小企業者及び組合

④創業した日から5年未満であり、次のいずれかから出資を受けている中小企業者であること。
  ア 東京都が出資するベンチャー投資法人傘下の投資事業有限責任組合
  イ 独立行政法人中小企業基盤整備機構の「ベンチャーファンド」事業が出資する投資事業有
     限責任組合

⑤分社化をしようとする法人

次の全てに該当する個別企業(法人・個人)

・事業を営んでいない個人で、「事業に必要な知識・経験」もしくは「法律に基づく資格」を有し、自己資金および具体的な事業計画があり、個人または法人で区内に創業予定もしくは創業後1年未満である。

・建設業・製造業・運輸業などは、従業員が20人以下である

・卸売業・小売業・サービス業は従業員が5人以下である

・本件融資を含めた全国の保証協会の保証付融資残高が1,250万円以下である

資金使途

運転・設備

運転・設備

利率

固定金利と変動金利から選択する。

そのときどきの金利状況に応じて決定される。

期間ごとに金利は、設定され、期間が延びるほど高くなる。

本人0.4%。区が1.5%を負担。

保証料

保証協会の定めるところによります。信用保証料の補助制度あり。

保証協会の定めるところによりますが、代表者が区内在住の場合、またはファッション・デザイン、ITなどの分野での創業の場合には、区が信用保証料を30万円まで補助

貸付期間

運転資金7年以内、設備資金10年以内(据置1年を含む)

7年以内(据置1年を含む)

経営相談員への相談

不要

必要

総合的な判定

経営相談員への相談が不要なので比較的、迅速に資金調達が可能。それでも、信用金庫等の審査と、信用保証協会の審査が2重にあるので、日本政策金融公庫に比べると0.5~1ヶ月は、余計に時間がかかります。審査期間は、1~2ヶ月。

金利、保証料を区が負担してくれるが、借入上限額が小さい。また、経営相談員への相談が必要であるために、調達に時間がかかり、創業時期が遅れる。審査期間は、2~3ヶ月。

それぞれの制度のメリットとデメリット

融資金額の上限は東京都のほうが上回っていますが、金利や保証料の補助が厚い点では、渋谷区の制度にメリットがあります。

経営相談員への相談を要件としないということは、東京の創業融資の大きなメリットです。

『相談』と記述されていますが、実質的には指導です。経営相談員がハンコを押してくれないとあっせんを受けられません。

市町村区の創業融資制度の場合には、経営相談員の指導を受けてからでないと利用できないのです。

経営相談員の指導だけでも、1~2ヶ月はかかり、その間だけ創業が遅れます

創業時期が遅れるデメリット

仮に500万円を借りて、金利と保証料を込みで2%の補助をうけたとしましょう。

その場合の経済的利益は、年間10万円です。

しかし、創業者の場合には、サラリーマンとちがって、得られる収入は、与えられているわけではありません。

創業というアクションをとらなければ1円もお金は、入ってきません。一ケ月、創業が遅れれば、それだけ稼ぎが小さくなるわけですから、機会を損失してしまうのです。

収入がきまっていて10万円だけ得をするならよいのですが、10万円のために創業がおくれたら、その間、得られる収入が0になってしまうのです。これでは大損をします。いかなる業種でも、創業をしていたら、一か月分の売上が、10万円を下回ることはないでしょう。

創業時期が決まっており、固定費が発生している会社の場合には、もっと深刻です。

創業企業とはいえ、役員報酬、従業員に支払う給料や地代、そのほかの経費を合算すると月の固定費は、どんなにけずっても数十万円~数百万円には、なってしまいます。

創業が遅れれば、その間は、売上はたたない上に、固定費はすべて無駄になります。

1ヶ月、創業が遅れれば、数十~数百万円の売上を失い、かつ、数十~数百万円の固定費は、無駄になってしまうのです。

経営相談員の指導について

日本標準産業分類によれば、産業の種類は、1,500もあります。

経営相談員といっても、生身の人間ですから、実際に経験がある業種は、限られています。

相談をうける業種に関しては、未経験であることが多いのです。

経験が十分にある創業者のなかには、事業のことをなかなか理解してもらえない苛立ちを感じられるかたも少なくないようです。

経営相談員への相談は、多くの起業家にとって時間の浪費と感じられることでしょう。

銀行窓口への対処の仕方

制度融資の窓口は、多くの場合、近くの信用金庫や地方銀行となります。

窓口では、市町村区の創業融資を薦めてくることが少なくありません。

銀行員も創業融資については詳しくない方が多いのです。

表面的な条件だけを考えて、創業時期が遅れることによる損失を理解していないのです。

創業時期が遅れることによる損失は、小さくはありません。サラリーマンと違って収入は、創業しなければ一円もはいってきません。

制度融資を利用するのであれば、『税理士から薦められたので』とか理由をつけて、強引に押し切り、東京都の創業融資制度を強く希望してください。

もちろん、その時点で税理士と契約をしている必要は全くありません。

もっともらしい口実を言えればそれでよいのです。

創業融資の基礎知識

  1. ⇒そもそも、お金は借りるべきなの?
  2. ⇒創業資金の集め方 さまざまな創業資金の集め方をご紹介します。
  3. ⇒日本政策金融公庫とは? 創業者にも貸してくれる公的金融機関
  4. ⇒信用保証協会と制度融資 信用保証協会の基本を理解しましょう
  5. ⇒『新創業融資制度』について 無担保、無保証の創業融資制度です。
  6. ⇒『中小企業経営力強化資金』について 無担保、無保証、要件上は自己資金不要、しかも融資額は最大2,000万円です。
  7. ⇒『新規開業資金』について 借りやすい創業融資制度です。
  8. ⇒東京都と市区町村の創業融資 ともに信用保証協会と自治体がバックアップする創業融資制度です。
  9. ⇒市区町村の創業融資の重大な欠陥
  10. ⇒創業融資の比較 選んではいけない創業融資制度とは?
  11. ⇒日本政策金融公庫と制度融資は、どちらが得か? 総合的には日本政策金融公庫です。
  12. ⇒創業融資の成功条件 創業融資に失敗しない秘訣を説明します。
  13. ⇒自己資金について 自己資金は融資審査ではとても重視されます。
  14. ⇒自己資金が不足しているとき
  15. ⇒創業計画書の業種経験の書き方 経歴アピールで成否が決まる。
  16. ⇒創業計画書の書き方 創業計画書の書き方で成否は決まります。
  17. ⇒創業計画書の記入例 日本政策金融公庫が提供する記入例です。
  18. ⇒資金繰り表の重要性 資金繰り表をすらすらと説明できれば、融資審査ではとても強くアピールできます。
  19. ⇒創業計画書と資金繰り計画書で創業融資は決まる
  20. ⇒創業融資の面談で守るべきこと 面談で犯しがちな失敗とは?
  21. ⇒創業融資の流れと必要書類 創業融資を借りる手順です。
  22. ⇒創業融資で新事業を立ち上げる 起業だけでなく新事業立ち上げにも使えます。
  23. ⇒創業融資の成功事例 自己資金不足、経験不足、事故暦、事業譲渡、高額融資の事例を集めました。
  24. ⇒創業計画書と事業計画書の違い 創業計画書は創業者用の事業計画書ですが、ちょっと特徴があります。
  25. ⇒創業後に赤字を回避するための具体的な経営手法
  26. 創業融資Q&A よくある質問にお答えします。

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創業融資には、日本政策金融公庫の制度と、制度融資があります。

制度融資とは、自治体の支援のもとで信用保証協会が100%の保証人になってくれる創業融資のことです。

それぞれ、またいくつかの異なった制度が用意されています。

制度融資の場合は、都道府県と市区町村の創業融資があります。

 

都道府県と市区町村の創業融資を比べると、一見すると、市区町村の方が、利子補給や保証料補助が厚いので魅力的に見えます。

利子と保証料の負担を合わせても、約1%ぐらいに抑えられる創業融資もめずらしくはありません。

 

しかし、市区町村の制度融資には、3つの大きな短所があります。

 

まず、第一に、市区町村の場合には、融資限度額は小さめに設定されています。

そのため、1,000万円近い高額融資になると成功確率がとても低くなります。

 

2番目の欠点は、融資実行までに時間がかかりすぎるということです。

市区町村の創業融資は、実行されるまでに3ヶ月以上は必要です。

制度融資は、もともと、銀行や信用金庫を窓口にしているために時間がかかります。

市区町村の創業融資の場合には、経営相談員が創業計画書の内容を、検証するので、さらに1~2ヶ月ほど、時間がかかってしまうのです。

経営相談員への面談は、最低でも数回は行われ、かつ、間隔を置いて実施されるので、短期にパスすることはできません。

 

この欠点は、致命的と言っても過言ではありません。

創業時の融資実行に時間がかかるということは、それだけ創業の時期が遅れるということです。

創業が遅れれば、それだけ売上を稼ぐチャンスを失います。

300万円の融資で、利子や保証料の負担が1%下がったからと言っても、3万円しか得はしません。

しかし、創業が2ヶ月遅れれば、失う売上は、その数十倍から数百倍になるはずです。

 

創業融資の場合には、実行が遅れることは、創業が遅れることと同じです。

創業が遅れれば、その分だけ、事業の開始がおくれ、売上を失います。

通常の融資と違って、創業時の資金調達の場合は、金利や保証料だけを重視していると、逆に損をしてしまうのです。

 

3番目の欠点は、時間がかかるにもかかわらず、創業融資の成功確率が、さほど高くなるわけではないということです。

経営相談員として指導するのは、ほとんどが中小企業診断士です。

中小企業診断士は、財務や資金繰り表はあまり得意ではありません。

一方、信用保証協会の審査は、損益計画や資金繰り計画の実現可能性を重点的に検証します。

2ヶ月以上、経営相談員の指導を受けても、創業融資を断られてしまうことはよくあります。

 

制度融資を利用するなら、東京都の創業融資のように、経営相談員への相談がなく、かつ、融資限度額が比較上大きい制度をご検討されることをお薦めします。

 

創業融資の基礎知識

  1. ⇒そもそも、お金は借りるべきなの?
  2. ⇒創業資金の集め方 さまざまな創業資金の集め方をご紹介します。
  3. ⇒日本政策金融公庫とは? 創業者にも貸してくれる公的金融機関
  4. ⇒信用保証協会と制度融資 信用保証協会の基本を理解しましょう
  5. ⇒『新創業融資制度』について 無担保、無保証の創業融資制度です。
  6. ⇒『中小企業経営力強化資金』について 無担保、無保証、要件上は自己資金不要、しかも融資額は最大2,000万円です。
  7. ⇒『新規開業資金』について 借りやすい創業融資制度です。
  8. ⇒東京都と市区町村の創業融資 ともに信用保証協会と自治体がバックアップする創業融資制度です。
  9. ⇒市区町村の創業融資の重大な欠陥
  10. ⇒創業融資の比較 選んではいけない創業融資制度とは?
  11. ⇒日本政策金融公庫と制度融資は、どちらが得か? 総合的には日本政策金融公庫です。
  12. ⇒創業融資の成功条件 創業融資に失敗しない秘訣を説明します。
  13. ⇒自己資金について 自己資金は融資審査ではとても重視されます。
  14. ⇒自己資金が不足しているとき
  15. ⇒創業計画書の業種経験の書き方 経歴アピールで成否が決まる。
  16. ⇒創業計画書の書き方 創業計画書の書き方で成否は決まります。
  17. ⇒創業計画書の記入例 日本政策金融公庫が提供する記入例です。
  18. ⇒資金繰り表の重要性 資金繰り表をすらすらと説明できれば、融資審査ではとても強くアピールできます。
  19. ⇒創業計画書と資金繰り計画書で創業融資は決まる
  20. ⇒創業融資の面談で守るべきこと 面談で犯しがちな失敗とは?
  21. ⇒創業融資の流れと必要書類 創業融資を借りる手順です。
  22. ⇒創業融資で新事業を立ち上げる 起業だけでなく新事業立ち上げにも使えます。
  23. ⇒創業融資の成功事例 自己資金不足、経験不足、事故暦、事業譲渡、高額融資の事例を集めました。
  24. ⇒創業計画書と事業計画書の違い 創業計画書は創業者用の事業計画書ですが、ちょっと特徴があります。
  25. ⇒創業後に赤字を回避するための具体的な経営手法
  26. 創業融資Q&A よくある質問にお答えします。

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