不動産の含み損を実現する
不動産に含み損を抱えている会社は、多いと思います。
売却すれば、含み損を吐き出して経費にできますが、その不動産を事業用に使っていれば、手放すわけにはいきません。
そこで思いつくのが、関係会社に売ってリースバックする方法です。
多額の含み損を経費にできる上に、事業用としても継続的に利用できます。
ただ、完全支配関係にあるグループ内の法人に売却しても、譲渡損失を計上することはできません。
外部株主がわずかでもいる関係会社か、あるいは、従業員持株会が5%以上の株式を保有している関係会社に売却をする必要があります。
外部株主が多少いても、支配権や資産の利用が制限されることはほとんどありません。
株式会社は、3分の2以上の議決権をもっていれば、定款変更、事業譲渡、解散、組織再編などを決議できますので、絶対的な支配権を行使できるからです。
従業員持株会は、経営者がコントロールすることが容易ですし、従業員に経営参加意識をもたせることができます。
また、売買取引に実態を持たせる必要があります。
含み損のある不動産の関係会社への売却は、多額の損失を計上できる節税対策ですが、この方法を不用意に実行すると売却損を否認された上に重加算税を課せられることがあります。
国税不服審判所に持ち込まれて納税者が負けているケースもいくつかあります。
そのため、税理士のなかにも、保守的に考えて、同族グループ内の不動産売買による含み損の吐き出しをいやがる先生もいます。
しかし、それは正しい姿勢ではありません。
積極的に節税を試みるべきです。
なぜなら、事実として、経済的な価値は滅失しているからです。
次の二つの裁決事例にお読みください。
納税者が勝ったケースと負けたケースを挙げました。
【平成11年12月22日裁決】
買戻し特約が付されており、不自然な取引ではありましたが、売買契約書が締結され、それにそって代金の支払、所有権移転登記も行われていました。納税者の主張が認められ、重加算税などの処分は取り消されました。
【平成13年5月29日裁決】
同族グループ法人へ譲渡後も、抵当権の抹消、及び、所有権の移転登記が履行されていませんでした。それに加えて、譲渡した会社が引き続き、賃貸人として賃貸借契約を締結し、賃借料を受取っていました。そのため、譲渡はなかったと認定され、譲渡損の損金算入を否認した更正処分を適法としました。ただ、契約、登記、入金先について基本的な対策をとっていれば、納税者は負けなかったと推測されます。
同族会社グループ内での不動産の売買であっても、売買契約書、所有権の移転登記、譲渡後の経済的利益の帰属さえ、しっかりとしていれば、過去の裁決事例から判断して税務署も否認はしづらいのです。
さらに、同族グループの各法人の事業目的がはっきりとすみわけされており、不動産を効率的に管理するために事業会社と不動産の所有会社を分けるという大義をかかげることができれば、否認されることはありません。
いずれにしてもしっかりとタックスプランニングをすれば、恐れる必要はありません。
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